Catatan perjalanan Lalara

0019
Perjalanan menanam ikan kering di Atami
#TelukSuruga #Atami #Thong  


伊豆半島は、もとは南方に生まれた火山島であった。フィリピン海プレートの動きにより北上して本州に衝突したのが100万年ほど前のことだ。その後も火山活動はやまず、13座もの火山ができた。伊豆半島の衝突により本州側でも土地が隆起するとともに火山活動も始まった。いまだに活動を続けるのが箱根山や富士山である。この箱根火山と、半島側の多賀火山、宇佐美火山などが東伊豆を本州側から隔離した。



半島のほぼ中央やや東寄りにできた巨大火山である天城山に端を発する狩野川は、半島北部に田方平野を作り、駿河湾に流れ込む。狩野川の右岸、平野の北端には三島、沼津の街ができ、古くから伊豆の中心として栄えてきた。伊豆半島全体の政治・宗教の中心を担ったのは、奈良時代創建ともいわれる三嶋大社である。三島は東国と駿河を隔てる箱根山の西の山麓に位置する。8世紀以降、東国(関東)と駿河以西の地域をつなぐ東海道は箱根山南部の箱根峠を経て小田原へと通じる。東海道が熱海を通ることはなかった。今でも三島から熱海に向かうには丹那トンネルを抜ける鉄道を別として、よい道はない。
それにもかかわらず熱海が三島と同じ伊豆の国に属したことには、修験が関係しているのではないかと思われる。富士山の修験の拠点であった村山(富士宮市)も、熱海・伊豆山の走湯山領であったとされているし、富士修験と伊豆修験の間には強いかかわりがあったという。


「Himono Dining かまなり」:釜鶴のひものをアレンジしたメニューを食べることができるカフェレストラン

東伊豆の熱海の名物といえば干物だ。熱海で江戸末期創業の老舗ひもの店「釜鶴」の5代目二見一輝瑠(ふたみ・ひかる)さんに話を聞くことができた。二見さんは、干物を広めるため、干物つくり体験もやっている。単に魚をさばいて干すだけではなく、朝から市場に行って魚を買い求めるところから始めるのだという。つまりこの体験によって、参加者は魚を入手するところから実際に食べるところまで、一連の流れを知ることができる。その体験ができるのは、海沿いを走る国道135号線沿いにある中心市街地のまんなかにあった。


左:「かまなり」の店頭にある足湯。地下源泉を使っています。 右:「旅する焼エビ大葉のジェノベーゼ」や「旅する丸干プロヴァンス風オリーブ・ハーブ」など、おみやげにもかわいい商品がならんでいます。

二見さんによると、熱海では干物は獲れ過ぎた魚の保存法として発達したという。日本人が利用する動物性食材の中で、魚介の多くは天然資源で、資源量は推定するのも制御するのも困難である。不漁のときはまったく獲れないが、豊漁時にはとことん獲れる。しかも豊漁、不漁は何の前触れもなくやってくる。家畜や家禽が飼育動物で、資源量がある程度制御可能であるのとは大違いである。そこで過剰に獲れた魚を加工する保存方法がむかしからあった。全国各地には、サバに塩をした塩サバが主に内陸の各地に運ばれた鯖街道が残されている。三重県・熊野地方のサンマのなれずしも、同様のいきさつから生まれたものだ。1960年代以降、獲れ過ぎたサンマの処理に困って、それまで作っていたアユのなれずしに代わってサンマのなれずしをつくるようになったというのである。


天日干しをしているカマスの干物

さて、熱海の干物である。熱海は県下有数、いや日本有数の干物の街である。干物といえば魚や肉を天日で干して保存性を高めた食品である。人類が発明した肉や魚の保存法はいくつかあるが、今も日本列島に残るものとしては、乾燥、塩蔵、発酵、酢や蜂蜜などへの浸漬、燻蒸、冷蔵・冷凍、密閉などがある。干物は、これらのうち、「塩蔵または醤油、みりんなどへの浸漬」と「乾燥」を組み合わせて作る保存食で、おそらくは相当に古くから作られ、食べられてきた。


「かまなり」の奥には、ひもの造り体験ができるスペースがあります。講師の二見さん。

先述の二見さんに話を聞いた。釜鶴では、その日に獲れた鮮魚をさばいて干物にしている。昔はどこともそうだったはずだが、釜鶴は今でもこの方法をとっている。伊豆周辺には干物の産地がいくつもある。熱海にも数店舗があるほか、神奈川県の真鶴や西伊豆の沼津は干物生産で全国的に有名である。けれど、獲れたての鮮魚を使って干物にしているところは数少ないという。多くは、冷凍魚を仕入れてそれを干物に仕立てて販売しているという。大量に、安定的に生産するにはそうする方が効率はあがるのだろう。


左上:新鮮なアジ、カマス、カワハギ  右上:アジを開いている様子
左下:カワハギの皮を剥ぐ作業は子どもたちも大好きな工程だとか  右下:カワハギの中央の骨がついている部分を取り除く



干物つくり体験もやってみた。まず、獲れたての魚をさばいて形を整える。さばきかたは魚種により少しずつ違うが、カマスはえらとはらわたをとって背開きにする。頭はつけたままにする。東伊豆名産のキンメ背開きで頭を割る。カワハギなどは頭をはらわたと一緒にとり、皮をはいで腹開きにして成型する。職人さんたちの作業をみていると庖丁さばきはリズミカルで簡単な作業に見えるが、実際やってみるとこれがなかなかに難しい。



できた魚を、濃度12~15%の塩水に漬ける。つける時間は、その日の温度や魚種によって異なるが、カワハギは9分~15分程度でよいという。かつては塩分濃度はもっと高かったらしいが、最近は減塩などもあってこの濃度・浸漬時間に落ち着いたという。
「塩といっても、イオン交換膜による製品や、『〇〇の塩』などと呼ばれている各地の特産品がありますが、どれがいいですか」 この質問に、二見さんは笑ってこう答えてくれた。
「塩なら、どれでもほとんど違いません。要するに、最適な塩梅にする。これが大事です」
塩に漬ける操作は、塩味をつけるためでもあるが、大事なのは魚の身の細胞の外にある細胞外液を抜くことにあるから、ということらしい。


塩水に漬けた後は、専用の乾燥機に入れます

成型が済むと、専用の乾燥機に1,2時間入れて細胞外液を飛ばせば干物の完成である。温度は30度前後でよいらしい。かつては干物といえば天日干しと思われてきたが、機械乾燥と天日干しとで味にほとんど違いはないという。


手際よく魚を開く熟練された職人さんたち

江戸時代から続く「釜鶴ひもの本店」では、様々な種類の干物を買うことができます

 干物に似た保存食のもうひとつが「くさや」である。獲った魚を干物と同じように開き、それを「くさや液」につけた後乾燥させて作るもので、強いうまみと強烈なにおいで知られている。くさや液とは、干物に使われる塩水を何度も使い続けてできた漬け液で、塩分のほか、魚のうま味成分や魚由来の酵素や微生物が加わって出来ている。強いうまみをもつほか、メイラード反応による着色と強いにおいのするくさや独特の漬け汁である。くさや液の成分についての研究もおこなわれてはいるが、今後の研究に俟(ま)つべき部分が多いようだ。なお、くさやは今では伊豆諸島の特産ということになっているが、二見さんによると伊東市にも一軒製造者があるという。



ところでくさやが伊豆諸島には残り、半島側にほとんど残らなかったのはなぜか。二見さんに聞いてみた。 「塩が制限要因になっていると思います。島であれば塩など簡単に手に入ると思われるかもしれませんが、製塩の工程では大量の薪を使います。小さな島では樹木が乱伐されて製塩の燃料となる薪がすぐ枯渇するのです」。 島には水も十分ではない。話が飛ぶが、海で遭難死した人の死因の多くは脱水といわれる。人体内の体液の塩分濃度は0.9パーセント。一方海水の塩分は約3パーセント。海上でのどが渇いたからと海水を飲めば浸透圧の関係で体内は一層の脱水状態に陥る。小さな島では水もまた貴重品である。島で樹木が伐られると森の保水力が奪われ、今度は水不足になる。島では、塩の次に枯渇するのは水である。島では水もまた貴重であった。干物の漬け液を作るには大量の水と塩が必要になる。そこで漬け液の「使いまわし」がはじまった。それがくさや液だったのではないかという仮説が導き出される。そう考えると、くさやは干物の一部ということになる。 ところで熱海ではどういう経緯から、なれずしを作らなかったのか。その理由の一つは熱海など伊豆半島東岸では米が取れないことが関係しているかもしれない。熊野にも平野はほとんどなく米は十分に取れないが、熊野川が運ぶ多量の砂は河口の北東部に、紀伊半島には例外的な砂浜を作った。その内側にできた狭い平野が米つくりを可能にしたのであろう。


左上:「釜つる」ランチメニュー  右上:和食処海「幸楽膳 釡つる」店は、行列になる人気店
左下:ふじのくに食の都づくり仕事人の内山栄二料理長  右下:カウンター席では干物を焼いてくれる



[取材協力]
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Himono Dining かまなり
[住所]静岡県熱海市銀座町11-6
[営業時間]8:00~16:00/火曜日、水曜日定休
[TEL] 0557-81-2263
[URL]https://kamanari.jp

●ひもの造り体験の詳細はこちら
[URL]https://coubic.com/kamanariws/booking_pages
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釜鶴ひもの店 本店
[住所]熱海市銀座町10-18
[営業時間]9:00~17:00
[TEL] 0557-81-2172
[URL]https://www.kamaturu.co.jp/index.htm
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幸楽膳 釡つる
[住所]静岡県熱海市銀座町10-11
[営業時間]<昼> 11:30~14:30 (ラストオーダー 14:00)
<夜> 17:30~21:00 (ラストオーダー 20:30)
[TEL] 0557-85-1755
[URL]https://www.kamaturu.co.jp/kamaturuwasyoku/
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取材に同行いただいたカメラマンさんに、取材の内容をご自身のブログで紹介いただきました。
こちらもぜひ御覧ください。
食べごろ撮りごろ 『ひもの造り体験』が教えてくれた「いただきます」と「ごちそうさま」
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