
旅のレポート「美味ららら紀行」
清らかな水がもたらす「マンゴー」と料理の秘密
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富士山の自然が育む三島エリア。源兵衛川に湧き出す水は、街の産業や農業、暮らしを支える重要な存在です。透明で清らかな水は「名水百選」に選ばれ、「水の都・三島」の清流のシンボルとなっています。源兵衛川の湧水がもたらす、地元の魅力あるスポットをご紹介します。
「水の都・三島」を代表する源兵衛川

三島駅前にある国の天然記念物及び名勝の楽寿園の小浜池湧水を源とし、農業用ため池の中郷温水池に注ぐ延長約1.5kmのかんがい用水路として、生活用水や農業用水として使われてきました。
「源兵衛川」という名は16世紀の室町時代後期に、水田開発のため用水路工事を行ったこの地の守護代「寺尾源兵衛」に由来すると云われます。
三島市の「水道水」は富士山に降った雨や雪が、長い時間をかけて溶岩流をつたい、地下水となって流下した天然水です。おいしいお水を毎日飲める、これは生活する上でとても大きな恵みであることは間違いありません。

源兵衛川の中には、散歩できる飛び石があり、6月にはホタルが飛び、市民の憩いの場があり、水の郷百選、疏水百選、平成の名水百選にも認定されるほど。
「水の都・三島」を代表する水辺の風景は、街中の中に溶け込み、自然と対話できるような癒しがあります。
川のせせらぎや木漏れ日にすっかり癒されて、心身ともにリフレッシュしましょう。
源兵衛川
住所 | 静岡県三島市芝本町 |
初めてだからおもしろいマンゴー作り
三島市は、高品質な食材の産地として広く知られています。特に箱根西麓三島野菜は、高級レストランで人気のブランド野菜ですが、鈴木農園さんではマンゴーも生産していると聞き、鈴木農園の鈴木貴之さんを早速訪問してみました。
以前はきのこを生産していましたが、「なぜマンゴーに転換したのか?」という質問に、2007年頃、貴之さんの父、政夫さんが「他の農家では生産していないものを」という理由から、マンゴーを栽培することに決めたそう。
しかし前途多難なマンゴー栽培。宮崎のマンゴー農家にも訪れ、試行錯誤しながらマンゴーを育て始め、現在の生産スタイルになり、甘くて美味しいマンゴーができるようになったそうです。

ビニールハウス3棟の中に約9,000個以上のマンゴーを育て出荷しているという。アーウィンという種類のマンゴーを主軸に、いくつかの品種を育てています。マンゴーの旬の時期は、6月下旬から7月下旬で、訪問した時期は、ちょうど旬真っ盛り。(7月)

ハウス内のマンゴーは、1つ1つ丁寧にネットに包まれ吊り下がっていて、これらの作業は全て手作業。鈴木さんは「完熟しネットの中に自然落下したものしか収穫しない」というこだわりがあり、地面への落下を防ぐようにネットで包み大事に育てている様子がわかり、鈴木さんのマンゴー愛が伝わってきます。
糖度18度以上、濃厚な甘さの秘密
美味しいマンゴーを育てるために水は重要です。特にマンゴーの肥大期(果実に見が詰まってくる時期)から収穫期にかけては、大量の水が必要となります。ミネラルたっぷりの富士の伏流水を地下から汲み上げた水を与える事で豊かな実をつけることにつながるのです。この三島の場所だから実現できる栽培方法です。そして、直接地面に植えず専用鉢を使用した根域制限栽培をしており、根の生育を抑えることで、木が大きくなれず、その代わりに子孫を残そうと、実に栄養を送る。そのため、たっぷり糖分が詰まった甘くジューシーなマンゴーになるのだそうです。

三島で育つマンゴーのブランド化「みしまマンゴー」
三島でマンゴーを栽培している農家は鈴木農園のみ。「大量生産ができないため、スーパーなどに卸せず、知名度も販路も拡大させることが難しい」と貴之さんは語ります。
そこで鈴木農園で採れるマンゴーは「みしまマンゴー」と名付け、ブランド化に力を入れるようになりました。
また、「三島mizumizuマンゴーをさらにおいしく食べる会議」というイベントも企画。
これは、地元で飲食店を営むシェフたちとコラボし、期間限定でマンゴーを使った料理やスイーツのメニューを提供しようと、毎年7月に開催しています。
貴之さんの「マンゴーはそのまま食べるのが一番おいしいのか?」という素朴な疑問からスタートしたイベントは、参加店も増え「みしまマンゴー」の価値、マンゴーの新たな可能性も広がりつつ、ますます楽しみになってきます。
鈴木農園
住所 | 静岡県三島市玉川12-1 |
電話 | 090-1821-8133 |
URL | https://suzukifarm-mc.shop-pro.jp |
地元食材と健康食ピカイチの「とびきりワイン&マンマのイタリアン ROSATO(ロザート)」

今回訪れたお店は、三島駅から徒歩5分、源兵衛川にも程近い場所にある赤いシェードがかわいらしいイタリアンレストラン「ロザート」。
「ふじのくに食の都づくり仕事人 マエストロシェフ」として表彰を受けている、オーナーシェフの 笹俣江梨子さんが、お出迎えしてくれました。
笹俣シェフは、「三島で料理教室を開業後、故郷の秋田に帰ってお店を開こうとも考えましたが、三島は豊かな自然環境や食材に恵まれており、さらに静岡県の人々は他県からの訪問者にも温かく接してくれる。その心地よさや静岡の県民性、そして応援してくれる人々の存在が大きく、三島市でレストランを開業することになった」と語ってくれました。

笹俣さんは、美味しい健康食を作る食の専門家資格メディシェフプロ 第1号でもあり、食育を積極的に推進する「三島市食育認定店」、厚労省基準による認証制度Smart Mealで最高賞の三ツ星などを獲得しています。
もちろん「三島mizumizuマンゴーをさらにおいしく食べる会議」の参加店でもあり、さっそくマンゴーを使ったメニューを注文しました。

イワシ、レーズン、松の実のパスタをもとに、みしまマンゴーと駿河湾の鯵を使用したオリジナルパスタ

「みしまマンゴーは完熟の自然落下のもので臭みが無く、果肉の状態も安定しており、デザート以外に加熱して料理に使うのもお勧め」と話す笹俣シェフ。
贅沢に大きくカットされたマンゴーが使われ、鯵の塩味とマンゴーの甘さが絶妙に絡み合った一皿は、夏にぴったり。新鮮で甘いマンゴーが料理全体に爽やかさを加え、おいしさを際立たせていました。今年のメニューも大好評につき早々に売り切れ終了となったとのこと。
「食べ物が体を作る」と言いますが、意識して食材にこだわり、健康に気を使い、おいしい料理を作るシェフの考え方がとても素敵です。
料理のおいしさはもちろんですが、ロザートのソムリエは全国コンクールで上位に入るほどの実力の持ち主。なかなか手に入りにくい貴重なワインと料理のマリアージュが楽しめる店としても有名で、特に訪日外国人からは高い支持を得ています。また、ムスリムの方の食習慣や文化を理解し、ムスリムフレンドリーの対応も可能なため、幅広い外国人観光客のニーズに応えるお店としても人気です。
とびきりワイン&マンマのイタリアン ロザート
住所 | 静岡県三島市芝本町5-23 |
電話 | 055-916-3956 |
営業時間 | ランチ/11:30-14:00 ( L.O.)、ディナー/17:30-21:30 (L.O.) |
定休日 | 火曜日 |
URL | https://www.rosatowine.com |
最後に
三島市は、休日にゆっくり過ごすために訪れる人が多く、また都内からの移住先としても人気の高いエリアです。富士山の湧水と美味しい食材に恵まれた環境は、三島の大きな魅力であり、他では味わえない食や体験を楽しむことができる特別な場所です。
ぜひ、静岡の「三島」を満喫する旅にお出かけください。
写真:小塚 司