
旅のレポート「美味ららら紀行」
風と文化を感じる小旅行~ eBikeで巡る遠州の小京都・森町 ~ 後編
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風光明媚な自然、宿場町の雰囲気を残す風情ある街並み、歴史ある神社仏閣の多さ等から、古くから「遠州の小京都」と呼ばれてきた森町のもうひとつの呼び名、“eBikeのふるさと”をご存知でしょうか?
今回みなさんにご紹介するのは、森町発祥のeBikeで町を巡り、歴史や文化に触れる旅。後編をお届けします。
>>前編はこちら
「noyau(ノワイヨ)」さんで、“ごほうび”ランチ!?

小國神社さんでたっぷりと歴史と文化を感じた後は、お待ちかねのランチタイム!
2度の山越えをがんばって乗り切った私たちへの“ごほうび”ランチとして、小國神社から車で5分、eBikeでも10分ほどで到着する「フレンチ食堂noyau(ノワイヨ)」さんを予約してありました。
古木さんご夫妻がこちらでお店を始めたのは令和5年(2023年)11月。季節をふた巡りしたことになります。
(お二人がここにお店を開いた詳しい経緯は、美味らららでも「治郎柿」の記事の中でご紹介しています。)
こちらは、ガイドの葭川さんもおススメのお店。
「大好きな人たちを連れていきたいお店」とおっしゃっていましたが、私も同感!
のどかな里山の風景を額縁のように切りとる大きな窓から、差し込むやさしい光。居心地の良い空間とお料理の良い香り。丁寧に作られたお料理をひと品ずつ、時間をかけていただくことで、慌ただしい毎日から逃避して非日常を味わえます。静岡からわざわざ出かけたいお店のひとつです。

エルドラード森町さんの企画するツアーでもおススメのランチスポットとしてご紹介するそうです。
この日のおまかせランチコースは、チーズの香りが食欲をそそるグジュール(チーズを混ぜた甘くないシュー皮)から始まりました。
スープは、かぶのポタージュ。滋味あふれるやさしい味わいのポタージュに、寒風の中、eBikeで走ってきた身体がほっこり和んでいくのが分かります。
芳ばしい香りの自家製カンパーニュとともにいただいたのは、お刺身で食べられる新鮮な甘エビのタルタル。ディルの香りをふうわりとまとった、味も見ためも、プロならではのお料理でした。添えられているのは、カリフラワーのムース。甘エビの頭もカリカリに乾燥させてあり、海老せんべいのように食べることができます。
メインは豚肩ロースの煮込み 季節の野菜添え。
豚肉は、ナイフが要らないくらいに柔らかく、ほろっと口の中でほどけていきます。溶けていく脂身とお肉のうま味のバランスがちょうどいい!
ブロッコリーとケールの交配種、アレッタの歯ごたえも絶妙な火の通り方でしたし、菊芋を煮込んだものは、独特の土のような香りと風味が、甘く濃厚な豚肉の脂と相性が良かったです。

「noyau(ノワイヨ)」さんのお料理は、食材の美味しさを積み重ねたり、掛け算したり。シンプルなのに、複雑さを織りなすハーモニーに毎回、驚かされているような気がします。
デザートは、ショコラのクレープとオレンジの風味が効いたジェラート。柑橘とチョコレート系の相性がいいのは承知していましたが、これも期待を裏切らない美味しさでした。
スープのかぶも、甘エビのお料理に使われていたカリフラワーも、お肉に添えられたアレッタも、菊芋も、全てが森町の食材。窓から見下ろせる畑で育った野菜も多く、作り手の顔もすぐそこに見える。畑から厨房、テーブルへとストーリーがつながっています。これぞ、まさにガストロノミーの醍醐味ですね。
森町を選んだ人、森町に還る人

食後の飲み物をいただきながら、古木さんご夫妻も交え、お話を伺いました。
この日、ツアーガイドを務めてくれた望月銀河さんは、地域おこし協力隊として、森町に移住して2年目に入ったところ。古木さんご夫妻は、移住して6年目。
森町で暮らしてみて、その魅力を伺いました。
「ひと言でいうと、“ちょうどいい”。本当に全てがほどほどの加減でちょうどいいんです。アクセスも悪くは無いし、自然も、歴史もあって。そういう全部がちょうどいいです。」
と大介さん。銀河さんも大きくうなずきながら続けます。
「私も全く同じで、最初っからちょうどいい(笑)。心地いいんです、すごく。
スロー“気味”ライフは楽しみたいんですけど、いきなり山奥に1人で住むってことは、できないじゃないですか。でも、森町は、普通の暮らしの中で、ちょこちょこ、“あ、豊かな生活しているかも”って思える。
例えば、こうじ屋さんのお味噌を使ったお味噌汁を作ることもその1つ。ここに来る前は、お味噌はスーパーで買うのが当たり前でしたから。そういうことが自然に無理なくできるってことが、すごく贅沢だなって思います。」

銀河さんはオーストラリア生まれ。進学した大学の制度を利用して17歳で来日。ホテルでの勤務や一時帰国を経て、英語を活かして日本で英会話教師の職に就きます。森町に移住する前は掛川市で暮らしていました。ご主人がヤマハ発動機の知人たちと、森町三倉の山中にマウンテンバイクの遊び場(後に「ミリオンペタルバイクパーク」の名称でマウンテンバイク専用コースとして本格運営)を作り始めた時、銀河さんも手伝っていたそうです。「ミリオンペタルバイクパーク」が一般にオープンした時も、受付のお手伝いをしていましたが
「合間にヒマだったので(笑)、自分用にコーヒーを淹れていて。そのうち、みんなも飲みたいんじゃないかなって、露店の許可をとっちゃいました。いまも週末は、そのコーヒースタンドを副業にしています。
数年は掛川から通っていたんですけど、“森町に移住しない?”って声をかけられたのが、地域おこし協力隊に応募したきっかけです。」
銀河さんの地域おこし協力隊としての活動内容は多岐にわたりますが、得意なDIYや手仕事を活かした地域資源の活用もそのひとつ。
「エルドラード森町」さんで使われていた古民家の床材と畑の杭を再利用したハンガーラックも、「noyau(ノワイヨ)」さんのテラスにあった流木を使ったコーヒーテーブルも銀河さんの作品だそう。
「週末だけ営業している銀河さんのお店“MILLION PIT STOP”で見た、小さなデイパックやディズプレイの枝等が素敵で、ハンガーラックだけじゃなく、うちのオリジナル商品も作ってもらいました。自転車のハンドルやフレームに装着してスマホ等の小物を入れて走るのに便利なミニバッグが可愛いんですよ。
スケジュールが合う日には、今日のようにeBikeのガイドツアーも手伝ってくださっています。」

そうお話してくださったのは、もう1人のツアーガイドの葭川里加さん。他の3人とは逆に、森町で生まれ育ちましたが、若いうちに森町を離れ、今は浜松市内のご自宅から「エルドラード森町」でのお仕事のために森町に通っています。
「こどもの頃はただの田舎だと思っていたんですよね。だから外に、都会に出たくて仕方なかったです(笑)。
森町の歴史とか文化とか、自然とか、そういう良いものも最近まで全然意識していませんでした。
それを教えてくださったのは、noyau(ノワイヨ)さんや銀河さんのような外から来た方々。森町に移住してきたり、ここで何かを始めたりする方って、人間的に豊かで魅力にあふれている方が多いから、すごく刺激になっています。
こんな素敵な人たちが集まる場所なんだと気づいたことで、この土地、この町に魅力があるんだって気づけました。」
小國神社を中心とした文化も根付き、人の心の豊かさもある土地。外から来た人も、一度は出て行った人も受け入れてくれる土地柄も森町の魅力で、それがまた人を呼ぶのかもしれません。

聖子さんにも森町の魅力を伺いました。
「私にとっては、この町の魅力は、どこに行っても癒される景色かな。お客さんにも見て欲しいから、ここでお店をやりたいって思ったんですけど。この景色を見ながら、仕事をしながら生活するってことは、自分たちのためだったのかなって思うようになってきました。そこに共感してくださるお客様がお店に来ていただけているけど、結局、自分たちが好きだったからって感じですね。」
森町の自然や景色、人の温かさに惹かれて移住を決めたと以前もおっしゃっていました。
古木さんご夫妻はこの町で暮らし、活動をしている作家さんたちとの交流もあり、メインのお料理に使われていた器は、午前中に訪れた「seison+」さんの高田かえさんの作品です。
次に訪れる予定のガラス工房「floresta fabrica(フロレスタファブリカ)」さんも、実は、聖子さんに以前からオススメされていました。毎年12月に開催されている「作家たちのオープンハウス」というイベントに参加されているお仲間です。

あ、いけません!「noyau(ノワイヨ)」さんの居心地が良すぎて、ゆっくりし過ぎました。
でも「floresta fabrica(フロレスタファブリカ)」さんは、すぐご近所。eBikeなら1分もかからずに到着です。

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フレンチ食堂 noyau(ノワイヨ)
〒437-0226
静岡県周智郡森町一宮4847−7
営業時間 Lunch:11時30分〜12時30分(L.o)
※前日まで要予約
Cafe:14時〜17時(Close)
定休日:日曜日+インスタのカレンダー参照
TEL:0538-74-7304
https://www.instagram.com/noyau_mori
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ものづくりの町に新しい風を吹き込む

ギャラリーの扉をそっと開けると、そこに並んでいたのは数々のガラス作品。冬の淡い陽の光が差し込んでやさしく繊細な光を放っています。どれも見惚れるほどに美しく、ガラスなのに、どこか温かみも感じるような作品もあります。
「floresta fabrica(フロレスタファブリカ)」さん。ポルトガル語で「floresta」(フロレスタ)は森、「fabrica」(ファブリカ)は製作所の意味。鈴木努さん、亜以さんご夫妻が平成28年(2016年)にこの地に立ち上げたガラス工芸の工房です。

実は、努さん、午前中に訪れた「静邨陶房(せいそんとうぼう)」の鈴木龍さんのご次男。高校卒業後、ご実家の生業である陶芸ではなく、ガラス工芸の道に進まれました。
「ガラスでなければ!っていう強い想いがあった訳じゃないんですけどね。」と努さん。

「でも、この道に進んでみたら、ひと言でガラス工芸って言っても、すごく奥が深かったんです。自分がやっているのは吹きガラスですけど、それ以外にも種類が色々あって。それでハマっていった感じ。
それに自分がこどもの頃から親しんでいた陶芸は、土作りから始まって、成型して、薬をかけて、焼く。完成までの工程がとても長いものですが、それに比べてガラスは一瞬一瞬。(高熱で熱せられたガラスは)刻一刻とカタチを変えてしまう。それも面白いですし、陶芸は土を直接触って形を作り上げていくの対して、ガラスは高温ですから触れません。道具を介してしか触れないことにもどかしさを感じつつも、でも、そこにも魅力を感じたんです。」

一方、亜以さんは大阪の大学でガラス工芸を学び、当時は東京の個人工房で働いていました。そこで出会ったお二人が努さんの故郷である森町に戻り、工房を立ち上げました。
元々、ものづくりの町である故郷、森町が好きで、自分の工房を持つなら森町でと思っていたという努さん。ガラス工芸の道を選んだ時に、父親の龍さんに「何をやってもいいけど、いつかは森町に帰ってきてほしい」と言われていたことも心にあったそうです。
令和6年(2024年)には、母屋を建て直しギャラリーもオープンしました。
ありがたいことに、制作風景を見学させていただけました。
お二人のまとっていた空気が作業場に入るとガラリと変化。ピリッとしまったのが伝わってきました。

溶解炉の坩堝(るつぼ)からガラスを巻き取ることから作品作りは始まりました。
真っ赤に溶けたガラスの塊に少しずつ息を吹き込んでいく努さん。手慣れた様子ながらも、そのまなざしは鋭く真剣そのもの。窯から取り出したガラスの塊がドロドロに溶けた状態のまま、型に入れて模様をつけると、そこからまた息を吹き込んでいきます。
あれよあれよと形が変わっていくその様子から目が離せません。努さんが息を吹き込む度に、作品に命も吹き込まれていくよう。

脚を付けたり、取っ手をつけたり、形成を補助したりする作業では、亜以さんがアシスト。
亜以さん、そのタイミングが来ると何も言わずに竿をもって炉に向かったり、必要な道具を持って側で待機していたり。作業をしながらも努さんの様子をチラリ、チラリと伺っています。


努さんも亜以さんを目の端に捉えながら、お二人が無言のまま、お互いにタイミングを見計らいながらの流れるような動きは、見事な阿吽の呼吸でしたが、同時に真剣勝負のような緊張感もはらんでいました。
見ているだけのこちらまで、思わず息をするのも忘れそうなくらい。

「私がこういう風に作りたい、表現したいと試行錯誤していることを、ひょいっとやってしまうんですよねぇ。」
少し悔しそうに努さんのことを話していた亜以さん。
その口調からは、先輩作家でもある努さんへのリスペクトの想いと、同じガラス作家としての矜持も伝わってきました。
旬の果物でパフェを作ってみたくなるようなグラスは亜以さんの作品。空気が揺らいでいるかのように見えるガラスの表情が魅力的な努さんのフリーカップ等。お二人それぞれの個性がありながらも、共通しているのは透き通ったガラスの存在感と、決してでしゃばることなく、生活に寄り添いつつも、食卓に華やかさをもたらしてくれそうなたたずまいの美しさでした。
まだeBikeでの帰り道があります。繊細なガラスの作品を購入するのは次に訪れるお楽しみにしましょう。

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floresta fabrica(フロレスタファブリカ)
〒437-0226
静岡県周智郡森町一宮4683−2
※ギャラリー&工房をお訪ねの際はHPからご予約を
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旅の最後に「森町土産」も忘れずに!

「floresta fabrica(フロレスタファブリカ)」さんを後にした頃には、冬の空にはもう夕映えが拡がっていました。
ゴールの「エルドラード森町」さんまでの帰り道には、最後の急坂が待っていましたが、バッテリーもまだ十分。ギアチェンジにもだいぶ慣れてきて、まっすぐな急坂をグイグイグイッと力強く登り切ることができました。
レンタルバイクの貸し出し時間は16時までなので、本当はもうタイムオーバーなのですが、今回は取材ということで特別に許可をいただき、最後にこちらも治郎柿の取材でもお世話になった「菓子司 中島屋」さんへ立ち寄りました。
私のお目当ては、お店自慢のあんぱん饅頭。あんぱんのような、お饅頭のようなもっちりとした生地が特徴の人気商品です。定番のつぶあん、お茶あん、栗、そしてクリームに加え、いまの季節限定のチョコレートなど、種類も豊富で選ぶ楽しさがあります。森町の特産品、治郎柿やとうもろこし等が描かれたオリジナルギフト袋に入れてもらって、この旅のお土産にしました。日落ちもするのでお土産にもピッタリなのです。

茶処でもあり、神社仏閣も多い森町は昔からお菓子屋さんが数多くあります。森町生まれの梅衣というお菓子や、秋に大人気の栗むし羊羹等は、それぞれのお店にそれぞれのファンがいらっしゃいます。
お茶屋さん併設のカフェがいくつかあるのも、この町の特徴かもしれません。
次はeBikeでスイーツ巡りをするのもいいですね。

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菓子司 中島屋
〒437-0215
静岡県周智郡森町森1555−2
営業時間:8時~18時
定休日:水曜
TEL:0538-85-2310
https://nakajimaya.buyshop.jp/
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ただいま!「エルドラード森町」到着

「中島屋」さんからゴールの「エルドラード森町」さんまでは、ほんのひと漕ぎの距離。1分で到着しました。
辺りはすっかり火点しごろ。(この日は特別。通常は16時までの返却ですのでご注意ください。)
日頃、運動を全くしない体力に不安だらけの私でも、1日楽しく快適に、eBikeを走らせることができました。これも電動アシスト自転車だからこそ。そして頼れるガイドのお二人のおかげです。
世界に誇れる森町生まれのeBikeで町を駆け巡りながら、この町の歴史や文化や風土を学び、この町を愛するたくさんの人たちと出会えた1日。今日1日で、もっともっと森町が好きになりました。
美味しいもの、キレイな景色、素敵な人やお店に出会うと、すぐに誰かに教えたくなる性分です。次は、誰を誘ってこの町を訪れましょうか。

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エルドラード森町
〒437-0215
静岡県周智郡森町森1408
営業時間:9時~17時
定休日:水曜、木曜
TEL:0538-31-2251
https://eldorado-morimachi.jp/
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旅のおさらい


取材日:2026年1月20日
ライター:ごはんつぶLabo アオキリカ
写真:小塚 司