旅のレポート「美味ららら紀行」

豊かな山を次の世代に残すため、命の尊厳を守るため~ 浜松発、ジビエの深化~

「いただきます。」

私たち日本人が食事の前に口にするこの言葉。そこには「食材への感謝、料理を作った人への敬意、自然や環境への感謝が込められているんだよ」と聞いて私は育ちました。

この「いただきます」という言葉、英語をはじめ、他言語に該当する言葉は無いそうです。フランス語の「Bon appétit!(ボナペティ)」は「召し上がれ」ですし、キリスト教文化が根付いている英語圏で耳にする「Let’s say grace.」は「お祈りを捧げましょう」。いずれも日本語の「いただきます」とはニュアンスが違います。

今回、取材させていただいたのは「命を大切にいただきたい」という強い信念で、命や環境問題に向き合う女性と、飽くなき探求心で新たなジビエ料理に挑み続けているシェフ。お二人のちょっとマニアックでジビエ愛あふれるお話は、「いただきます」という言葉について改めて考えさせられる時間でした。

熟練シェフによるジビエのフルコース

訪れたのは、浜松市の閑静な住宅街にある一軒家のフレンチレストラン「ラ・サリーブ」さん。

オーナーシェフの鈴木孝治さんは、浜松のフレンチ界をけん引してきた重鎮のおひとり。浜松調理専門学校卒業後、17才で大阪へ。料理人としてのスタートはホテルでの洋食からでした。21才の時フランス料理の奥深さに触れ、この道を志し、フランス料理店で修業後、渡仏しました。「テート・ノワール」「タイユヴァン」「コンコルド・サンラザール」等、名だたる名店で研修を積み、昭和62年(1988年)に帰国。佐鳴台に「ビストロ・ラ・サリーブ」を開店し、9年後、半田山に移転して現在に至ります。

「浜松でジビエ料理を食べるならば、まずはここがいいと思います。」

とお店を紹介してくださったのは、天竜区春野町にあるジビエ工房「ジミート」代表の高林麻里さん。

この日は、一緒にお料理をいただきながらお話を伺いました。

全国からジビエ好きのお客様が集まるという「ラ・サリーブ」さんですが、ジビエ料理専門店ではありません。

近海の魚を使ったお料理もありますし、メインのお料理もジビエと牛肉から選べるようになっています。しかし、この日は、「せっかくなので」と麻里さんが手掛けた鹿肉を中心にしたジビエのコース料理をご用意くださいました・・・が!その最初のひと皿から衝撃的!!

富山産のツキノワグマのトリップ・ア・ラ・カーン。黒い色は竹炭を使っているため。

白いポット型の器に中は、真っ黒に煮込まれたお肉。その正体は、富山産のツキノワグマのトリップ(胃袋)。

元はフランス・ノルマンディー地方の郷土料理で、牛肉のトリップ(胃袋=ハチノス)を使いますが、それを鈴木シェフがジビエ(熊肉)にアレンジ。とろとろに煮込まれていて、内臓特有の臭みは一切感じられません。うま味が濃厚で、でもギトギトした感じが一切口に残らないのは、下処理によほどの手間ひまをかけているからでしょうか。

フレンチのひと皿めは、シェフのこだわりが凝縮され、食欲をそそる「お楽しみ」。お店からの歓迎の意を表す重要なひと皿だと言いますが、このツキノワグマの美味しさに魅了され、次のお皿への期待がグンと高まりました。

前菜の盛り合わせも圧巻!!ジビエオールスターズと名付けたいくらい。

前菜盛り合わせは、ジビエオールスターズ、またはジビエアベンジャーズと名付けたいひと皿。

ココット皿に入ったものはヒグマの薬膳風、煮凝りのような鹿のゼリー、鹿のハム、丁寧に皮を剥いた鹿のタンのハム、猪の肩肉のハム、鹿の腎臓(マメ)のスモーク、穴熊のハム。

麻里さんも「大好き!」と話していたヒグマの薬膳風。アジアンな香りをまとったお肉は、ほろっとほどける。

フレンチなのに、薬膳風のお料理が出てくるのも、探求心旺盛な鈴木シェフならではです。

「愛知の幡豆(はづ)温泉に薬膳料理を出してくれるところがありましてね。そこではダチョウの肉でしたが、こういうのが1品入っているといいな、と思ったんです。それまで熊は煮込んだりスープにしたりしていましたが、薬膳でやってみたらとてもよかった。ジャンルが違うのもいいよね。」

確かに、盛りだくさんの前菜の中にメリハリが生まれていました。ルバーブのコンポートや柿のドライフルーツ等、添えられている酸味のあるフルーツや野菜も、お料理に緩急をつけています。

どのお料理もジビエ特有の、力強い肉の風味はありますが、1品目のツキノワグマ同様、臭みが全然ありません。中でも、鹿の腎臓のスモークの美味しさにビックリ。腎臓は1つの個体に2つしかない希少部位。下処理が悪いとアンモニア臭くて、とてもとても食べられないのだそう。麻里さんは、生け捕りした個体から内臓を摘出する際、真っ先に摘出。すぐに流水で冷やし、できるだけ早く真空冷凍したものを出荷しています。

「麻里ちゃんだから、ジミートさんだからできること。」

と鈴木シェフ。

「シェフは、“こんな肉があるんですけど”と持ってくると、それをいろんな方法で調理してくれて、その度に“はしっこ”を食べさせてもらえるので、私自身の食や調理法の経験値もどんどん上がっています。」

全幅の信頼を感じさせるまなざしでシェフのことを見つめながら麻里さんも話してくれました。

お話を伺った「ジミート」代表の高林麻里さん(左)と「ラ・サリーブ」オーナーシェフの鈴木孝治さん(右)

現在は麻里さんが代表を務めるジビエ工房「ジミート」ですが、元々は平成28年(2016年)に地元の狩猟をする方々がNPOを結成し、市の補助金を得て始めた施設でした。しかし、豚熱や、新型コロナ感染症の流行に直面。メンバーの高齢化もあり令和2年(2020年)に閉鎖してしまいます。

ジビエには、国のガイドラインがあり、保健所の許可を得た施設から出荷したものでなければ市場に流通させてはならないという決まりがあります。施設が無くなってしまうと、山で増え過ぎた鹿や猪を、美味しく料理してくれる料理人や飲食店に結びつけることができなくなると、2022年に麻里さんがクラウドファンディングや地元の方々の協力のもと、施設を復活させ、運営を始めました。

春野町の中でも山深い杉地区にあるジミートの工房。お茶と椎茸栽培が自慢の特産品。(写真提供:ジミート)

ご実家は浜松市内で竹を資源化する事業を手がけていて、飲食業も営んでおり、地域の食や自然に対する知識も深かったとはいえ、ジビエを扱うのは初めて。地元猟師の師匠について修行の日々が始まりました。厳しい山の仕事は、昔ながらの世界。最初はなかなか受け入れてもらえなかったそうです。

「いまでは、私が自分の車で山に登っていくと、通る集落の人から“麻里ちゃんが通ったぞ”って言われるようになりましたけどね。」

そう笑いながら話してくれた麻里さんですが、こどもの頃から親戚にもらった猪肉を食べていたものの、美味しいと思ったことはありませんでした。でも、あるレストランで、ちゃんと業者が処理した肉を、ジビエ料理に精通したシェフが調理したものを食べて、その美味しさに驚き、ジビエに興味を持つようになったのだそう。

 そんなご自身の経験からも「美味しく食べてもらうことが大事だ」というのが麻里さんの信念のひとつです。

本来、ジビエは11月15日から2月15日が猟期ですが、浜松市では大型動物(鹿、猪)の猟期は長く設定されていて11月1日から3月15日まで。それに加えて有害動物の駆除期間も伸び、ほぼ1年中、365日、猟期か有害駆除で山に入ることができる状態です。でも、「ジミート」は6月~9月前半まではお休み。猟師さんや農家さんからは、その時期でも「処理をしてほしい」と言われることもあります。

施設の衛生管理は徹底的に気を付けている。肉の解体処理はとにかく時間との闘い。(写真提供:ジミート)

「でも、私(ジミート)は処分場ではないので、美味しく食べてもらえる保証がない期間はできません、と割り切ってお断りしています。真夏の暑い時期は、肉の安全性も担保できないですから。」

というのも、ジビエの処理は、時間と鮮度が大事だから。

通常でも命をいただいてから1時間以内に施設に持ち込み、丁寧に、でもできるだけ素早く解体作業を行いますが、持ち込まれるまでに内臓や肉をどれだけ新鮮な状態でキープできるかによって、肉の質、つまり美味しさが段違いに変わるのだそう。夏場は気温も湿度も高いので、刻一刻と肉も内臓も傷んでしまうのです。

「鹿たちに対しては、本当はやってあげたい気持ちはありますよ。でも、人が安心して美味しく食べられるものを作って販売するのが人間界のルールだと思うんです。可哀そうだから処理するんじゃなく、“美味しくいただくために”処理をするんじゃないと意味が無い。だから、その時期も捕獲のお手伝いはしますけど、結局、捨てるのを目撃しないとならないのは辛いですね。皮ですら傷んでしまって使えないので。」

「森の課題」を伝える

(写真提供:ジミート)

「ジビエをやっている人って、“命の大切さを伝えたいからやっている”って方が多いです。私も最初はそうでした。当然その想いは今もありますが、実際に関わってみたら、山の課題が大きかったんです。

今、川が枯渇しているんですね。理由はいろいろあるんですけど、木が古くなってきて含水率が低くなってきています。増えすぎた鹿が下草を食べてしまうので、土が露出してしまう。そこに雨が降ると土が流れて、石山みたいになってしまうんです。するとさらに水を含むことができなくなるから、土がどんどん流れてしまう。鉄砲水とか土砂崩れが増えているのは、山が水を含めなくなっているせいでもあります。要因のひとつとして、鹿が増えすぎていることがあるんです。」

山が崩れるのを防ぐために、草を生やそう、木を植えようとしても、鹿が多すぎて定植する前に食べられてしまうのだそうです。そこで、とりあえずの対策として砂防ダムを造る(=土が流れないようにコンクリートで固める)のですが、コンクリートにも寿命があります。人が住んでいないような山奥でも、山が崩れたら困るので砂防ダムがどんどん増えていて、文字通り、コンクリートの山になっているところも多いのだそう。

そしてそのために多大な税金が使われていると言われて、ハッとしました。

以前「豊かな森、豊かな山が豊かな海を育む」と提唱されていたことがあります。漁獲量や海の生態系に関する問題だと捉えていましたが、鹿を減らして、豊かな森や山を取り戻すことが、私たちの生活にも直結する税金にも関係してくるとは、考えたこともありませんでした。

「もっと手が付けられなくなる前に、できるだけ早く鹿を駆除して、適切な頭数にして山を復活させる方向に循環させていかないと、もっともっと私たちの負担が増えていきます。」

それには他人事ではなく、自分事として知ってもらうことが大事だと麻里さんは続けます。

「ジミートの次の展開として、もっと市街地に近い(春野地区と天竜地区の堺)エリアにもう1つ施設を作りたいと思っています。そのエリアは昔から猪が多いんです。今も依頼はあるのですが、現在のジミートの場所だと持ち込むのに車で40分くらいかかってしまいます。今後、猪をもっと積極的に受け入れるためにも、そのエリアに施設が必要になります。

それに、“見学に来たい”と言ってもらうことがとても多いので、せっかく新たに建てるなら、見学可能な施設にして、“もっと学びたい”、“もっと知りたい”という声にも応えたい。山の課題は他人事じゃないってことを発信していく場所にしたいんです。“美味しい”でもいい、“可哀そう”とか“可愛い”とかでもいい。みなさんが引っかかるところを窓口にして、山の課題を伝える仕事をしていきたいと思っています。」

これぞプロの技を堪能

お話を伺っている間もお料理は続きます。

次にいただいたのは、鹿のブイヨンのスープにラビオリが浮かんだひと品。

鹿のブイヨンのスープに浮かんでいたのはアライグマのお肉を使ったラビオリ。

ラビオリに使われているお肉は、なんとアライグマでした。

昔流行ったTVアニメの影響もあり、可愛いペットのイメージがありますが、実は気性が荒く、野生化したものが年々増えていて、ミカンや柿、トウモロコシ等の農作物に被害を及ぼす厄介な存在なのだそう。初めていただきましたが、そのお肉は、ラム肉のような獣っぽい香りをふわっと感じたものの、濃厚な赤身肉の味わいでした。

さらに驚きだったのは鹿のブイヨンでとったスープの美味しさです。細胞に沁みわたるような滋味あふれる味わいは、丁寧に手間ひまかけて作られたまさしくプロの技。こういうシンプルなものにこそ、料理人の仕事が光ります。

メインには鹿肉のソテーが登場。もちろん、麻里さんが処理をした鹿肉です。

ルビー色が美しい、最高の火入れの鹿肉のソテー。

 「その時その時でお肉の状態も違うのに、シェフはいつも完璧にピタッと焼き上げてくれるんですよ。」

と麻里さんが言えば、

 「いやいや、焼く時間は決まっていて、その半分の時間で蒸らしましょうって法則みたいなのはあるんですよ。」

と照れながら鈴木シェフ。

 「シェフは簡単そうに言うけど、それができないんですよ、私もたまに、“お、今日はよくできた!”って時があるけど、まぐれだもん。(笑)」

 お二人のやり取りが実に楽しそうで、信頼しあっているのがひしひしと伝わってきます。

「僕の経験からすると、鹿や猪は、仔羊や鴨より“ちょっと”火を多く入れるんですよね。」

その“ちょっと”が難しいと麻里さんは言います。

最近は若いシェフたちもジビエに興味をもって扱ってくれるようになりましたが、“家畜”(の肉)の火入れで料理していることが多いと感じているそう。

交わす言葉の端々にお互いへのリスペクトと信頼を感じました。

鈴木シェフがおっしゃるには

「生焼けってわけじゃないんですけどね。“もうちょい”、本当に、あと少し火を入れたほうがいいんです。というのもね、鹿でもあり得るけど、特に猪はB型肝炎にかかっている可能性があるから、ちゃんと火を入れないと怖いんです。もちろん、推奨もされています。でも、旨さを追求すると、そこはせめぎあいなんですよね。どこのラインまで火を入れるかって。」

そこが経験値。ジビエが流行ってきて、色々なお店で食べられるようになってきたからこそ、本当に美味しくて安全なものを提供してもらえないと、“ジビエってこんなものか”で終わってしまうのはもったいないし、一過性のブームで終わって欲しくないとお二人は考えています。

「最初にジビエを召し上がる時は、猟師さんからもらったものではなくて、ぜひレストランで食べていただきたいです。そして、できれば経験豊かな料理人さんのお店がいいです。

ジビエは家畜のお肉と違って肉質や味が安定していません。不安定な食材を上手に料理するには、培ってきた経験や技術が大きく影響しますので。」

ジミートのジビエの魅力 

「彼女がいなかったら、今のうちのジビエは無いね。それに技術もすごいんですよ。自分ももっと勉強したいと思わせてもらっています。」

麻里さんについて伺った時の鈴木シェフの言葉は、彼女に対する最大級の賛辞でした。

「おかげさまで先輩猟師さんたちからも、腹だし(内臓を出す作業)に関しては誉めてもらえるようになりました。“早いね”、“上手だね”って。そう言ってもらえるまでには、かなりがんばりました。命をいただく以上、いい状態で料理人さんにパスして、超付加価値の命に代えてあげないといけないですから。」

先輩猟師さんや鈴木シェフも認める、解体の際の手際の良さもさることながら、細やかな気遣いも麻里さんならではだとお話を聞いていて思いました。

麻里さん、新たな取引の前にはどんなに忙しくても、必ず一度は直接会って話をして、ご自身の想いを伝えることにしています。そして、そのお店や料理人さんの目指している料理によって、出荷する個体を調整しているそうです。

「例えば、和食のお店には、味が優しめの若い個体や雌の個体を出すようにしています。一方で、一般的には雌の若い個体が美味しいって言われていますが、フレンチのシェフならパンチのきいたソースで出したいだろうから、肉の味が強い大きな個体を出したりとかね。」

そうした細やかな心配りが料理人さんたちの信頼にもつながるのでしょう。麻里さんがこの仕事を始めて4年目ですが、現在20軒ほどまで取引先が増えています。

そうした料理人さんたちと話をする時も、鈴木シェフはありがたい存在。

「料理人の目線で、もっとこうした方がいいとか、こういうことに興味があるんだとか、アドバイスをいただけるので、自分が食材の知識を深めていくのにもありがたいです。肉の扱い方とか、美味しくする情報とかももらえますが、私を通して、それを後輩シェフたちにも伝えられる、無くてはならない大先輩です。」

さらに麻里さん、本来はジビエには必要ではないトレーサビリティ(商品の生産から消費までの過程を追跡すること)番号をつけて出荷しているんだそう。

「トレーサビリティ番号で各個体を管理できているので、ご希望があれば、このお肉は、どこで、どういう状態で(罠に)かかって、周りにはこういう植生がある場所(=何を食べていたか等が分かる)で獲れたものですよって、ストーリーをつけて出荷することが可能です。ちょっと大変なんですけどね(笑)

でも、そこまでやれば、シェフもカウンター越しに、お客様に対してこのお肉にはこういうストーリーがあるんですよって伝えて料理してくれる。そうすると、リピーターさんがつきやすくなるんですよ。」

努力を重ねて培ってきた処理技術が生むお肉の質の高さはもちろんですが、こういう丁寧な仕事ぶりも、鈴木シェフはじめ、多くの料理人が信頼を寄せる由縁なのですね。

変わるジビエ、変わる食文化

コース料理はまだ続いています。

デザートで、また驚かされました。なんと、デザートにまでジビエが使われていたんです。

写真手前のチョコレートケーキ。白く見えるクリームには穴熊の脂、スポンジには猪の脂、コーティングに使われたチョコレートにも鹿の血を使っているそう。奥の竹炭のアイスも油脂分の代わりに猪の脂を使っているというから衝撃です。

お味はというと、これが驚くほどに美味しかった!

ケーキはお酒の香りが最初に来ますが、その向こうから、そこはかとなく何かしらの獣の香りがちらっとあり、これがジビエであることを思い出させます。最後に鼻に抜けていく甘い獣の香りは、確かに穴熊のものでした。竹炭のアイスの濃厚なミルクのうま味も猪だからこそだと言います。

鈴木シェフの手にかかると、ジビエ料理の深化が止まらないような気がします。

最初から最後まで、驚きと感動の連続でした。

「これからは、ヌートリアにも注目です。食べやすいし、美味しいですから。」と鈴木シェフ。

ヌートリアはネズミ科の動物。浜松にも増えてきていて、田んぼを荒らしてしまうそう。全国的に被害が増えてきているため、今後、ますます駆除される個体も増えると考えられています。

「ヌートリアは、豚とか鶏とかの代わりになると思いますよ。大きさもいいし、味も美味しいけど、肉が硬くならないのも特徴です。肉が硬いと煮込みにしたりとかコンフィにしたりとか、調理法が限られてきちゃうんですが、ヌートリアは生のままソテーにしても食べられるし、何でもできそうです。」

熊、鹿、猪、穴熊やアライグマ、そしてヌートリア。食用の野生動物も、そして食べ方も、変化と深化の時を迎えています。時代や自然環境の変化によって、食文化も進化していくものです。

私たちは、新たな食文化の創出の瞬間に立ち会っているのかもしれません。

 

 後日のこと。

「ジミート」さんのSNSで「施設の水不足により、作業がほとんどできない状況が続いています。」という投稿を見つけました。応援セットの購入が少しでも力になればと、すぐに取り寄せてみたのですが、梱包の丁寧さにまずは感動。クール便で届いたお肉は、どれも丁寧にしっかりと梱包され、全く溶けることなくカチンコチンの状態で届いたのです。さらに、初めて調理する鹿肉ですから、自分で料理できるかなと不安に思っていましたが、それぞれの部位に合わせたレシピもついていました。

いただいた命を美味しく食べてもらうための、麻里さんの惜しみない努力がひしひしと伝わってきました。

麻里さんは、お肉を解体する作業だけではなく、時には、わな猟にかかった生け捕りの鹿を仕留めることもあるそうです。その際、血抜きのことまで考えて鹿の体にナイフを入れると話していました。

ただ命を奪っているのではありません。命をいただく以上は、一番美味しく食べてもらえるお肉にして、最高の状態で料理人さんたちまで届けるのが、自分の仕事だから、と命をいただくその瞬間も、美味しいお肉にしてあげるための最善の選択をするのです。

世の中には、お医者さんや獣医さんのように生き物の命を救う仕事もあります。でも、麻里さんたちのように、生き物の命をいただくことを生業にしている方もいます。そういう人間の「覚悟」と「強さ」を彼女から強く感じました。

「ジミート」さんのオンラインショップで購入した品々。レシピ付きなのでジビエ料理初心者も安心。(撮影:ライター)

届いたお肉は、ソーセージとブロック肉が3種類。

鈴木シェフのような完璧な火入れを目指して、いただいたレシピを参考に、まずはローストベニソン(ローストビーフの鹿肉版)に挑戦しようと思います。

食べる前には「いただきます」の言葉をかけるのを忘れずに。

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ジビエ工房 ジミート(事務所)

〒431-3121

静岡県浜松市中央区有玉北町1300番地

営業時間:10時~16時

TEL:070-9070-4310

https://harunojimeat.com/HP

オンラインショップ

https://jimeat.official.ec

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ラ・サリーブ

〒431-3125 

静岡県浜松市中央区半田山1-18-28

営業時間:11時30分~13時00分(L.O)

     18時~19時(L.O)

※完全予約制、前日までにご予約を

定休日:不定休

TEL:053-434-9966
https://www.wr-salt.com/salive/home.html

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取材日:2025年11月27日/2026年1月27日

ライター:ごはんつぶLabo アオキリカ
写真:小南喜彦

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