ららら紀行

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静岡茶、新たなる挑戦と深化・前編
#日本平  #お茶  #和紅茶  #日本茶  #静岡茶  #静岡市  

茶処静岡のピンチ



みなさんは1日に何杯のお茶=日本茶を飲みますか?

静岡生まれ静岡育ちの私は、こどもの頃から毎日の食事にお茶(緑茶)があるのは当たり前でした。
大人になったいまも、朝起きたらボトルで作った水出し煎茶をまず1杯。昼ごはんのお供も水出し煎茶。日中の水分補給はペットボトルも含め、お茶を飲むことが多いですし、夕食時にはお茶を急須で淹れるのが毎日の習慣です。そして、食後にも淹れ直したお茶をまた1杯。夕飯後は睡眠の妨げになるカフェインが気になりますが、水出し緑茶ならカフェインが抽出されにくいので、寝るまでの間にも何杯か飲んでいます。
お茶好きな私の場合、飲む回数が普通よりも多いかもしれませんが、茶処静岡に住んでいる人は、みんな同じようにお茶を飲んでいるものだと思っていました。
でも、今回、お茶をテーマに取材を始める前に、雑談として周囲の人達に聞いてみてビックリ。
「ペットボトルのお茶は飲むけど、茶葉は買ったことがない」とか「急須はもう処分しちゃった」とか「ごはんの時に飲むのは、水か麦茶か烏龍茶」とか・・・日本茶を飲んでいない人がとても多かったのです。

茶処静岡の人間なので、友人や知人にお茶に関わる職業の方もいますし、ニュースなどでも取り上げられていますから、日本茶が昔のように売れなくなっていることはもちろん知っていました。茶葉の価格が下がり続けていることや、高齢化も伴って廃業されるお茶農家さんが多いことも聞いてはいました。
でも、どこか他人事。自分自身の周りでもこんなに日本茶離れが進んでいるとは思ってもいませんでした。
斜陽産業と言われてしまっている茶業界でも、真摯にお茶作りの努力を重ねている農家さんや、若い世代の新たな挑戦に目を向けよう、希望を見出そうとテーマを決めていたのですが、衝撃的な負の現状を突きつけられたところから取材が始まったのです。



お茶は植物であり、農作物であり、飲料です。
たくさんの手間をかけて茶の樹を育てる人たちがいて、収穫した茶葉を蒸したり揉んだり乾燥させたりして、まずは荒茶にする方々がいます。その荒茶をさらに加工して仕上茶にしたり、産地や品種をブレンド(合組)して味を均一化させたりする人たちもいます。お茶の新たな可能性を求め、茶葉以外の商品開発を目指す人もいます。こうして多くの人の手を経て植物だったお茶の葉は「商品」として私たち消費者の元に届きます。

それは、まるで川の流れのようだなと思いました。
源流はお茶の樹です。多くの人の手間ひまや想いが、支流のように流れ込みながら、様々に形を変えて消費者が待つ河口まで届くイメージです。

いま、この記事を書きながら、取材先でいただいた茶葉を水出しにしたものが傍らにあります。
スッキリとした飲み口で、じんわりと甘みを感じる川根の浅蒸し茶です。

うん、やっぱり、お茶は美味しい。

だからこそ、斜陽産業と諦めることなく、様々な挑戦を続ける茶業に関わる方々の姿をみなさんにも知ってもらいたいと切に願いました。そこで、今回は「静岡茶」という川の流れを巡る旅にみなさんをお誘いします。


和紅茶に“割り切って”舵取り




まず訪れたのは、静岡市清水区・両河内地区。最寄りの清水駅からは車で20分あまり。緑あふれる山間の道をぐんぐん登ってたどり着いたのは、地元の農家8軒が集まって起業したことが名前の由来の「グリーンエイト」さん。いまは8軒では無いものの、創業時の名前と志を引き継ぎ、お茶農家として茶の栽培、加工、荒茶の卸販売だけにとどまらず、自分たちでお茶の販売も行っています。
ここ数年、彼らが力を入れているのが和紅茶の製造販売。茶工場にカフェを併設、駅ビルにも出店するなど、独自の戦略で注目されている農業法人です。

興津川の上流の静かな山里で育つ両河内のお茶は、静岡茶市場で行われる新茶の初取引で最高値をつけたり、皇室への献上茶として選ばれていたりという印象があり、昔からの茶産地なのだと思っていました。

「山深く、川が流れ、霧が発生するような谷間の土地の茶畑というのは、静岡中部のお茶産地の特徴であり、この地区に限ったものでは無いんですよ。聖一国師の伝説もある本山茶に比べたら、ここ両河内・和田島は、お茶作りの歴史も浅い土地柄です。その中でこの地域の茶葉の特徴としては“人の力”。
後進だからこそ、栽培方法や製茶方法はもちろんのこと、ブランディング、売り方など、努力と研鑽を重ねてきての“いま”があります。」



そうお話ししてくださったのは、グリーンエイト代表取締役の北條広樹さん。

山間で育つ茶葉はやわらかなので、蒸す工程や時間が短い浅蒸し茶に仕上げるという、両河内のお茶の特徴を説明してくださった上で、1番の特徴は「人の力」だと言い切る言葉に、先人達の苦労と努力へのリスペクト、そして、いま現在自分たちが取り組んでいることへの自信と希望が伝わってきます。

家業を継いだ当時のことを伺うと

「振り返ってみると、いまよりはまだマシだったんですけどね。当時、茶価がどんどん下がっていました。生産者がただお茶を作って問屋に卸しているだけではやっていけない状況で。だから自分たちで直接お客様にお茶を売り始めたんです。当時から緑茶だけではなく和紅茶も始めていました。日本の紅茶発祥の地である(静岡市)丸子で修行も積みました。最初は3種類の茶葉を使ってのスタートでした。」

商品として販売を始めたのは2012年ごろ。県内でのイベントやマルシェへの出店はもとより、都心でのポップアップでの出店販売なども経験し、直接お客様の声を聞き、商品作りのヒントを得たと言います。

「マルシェやポップアップストアで、直接、お客様と接する中で、自宅でも外出先でも日本茶は飲まないけど、紅茶は飲むという人がまだまだ多いことに気づいたんです。紅茶にはまだ需要があると。どんなにいい茶葉を仕上げたとしても、これは緑茶で勝負してもしょうがないと割り切りました。美味しさと、市場としての将来性を感じた紅茶に力を入れていくことにしたんです。」





2015年には茶工場の隣に「グリーンエイトカフェ」を開設。
カフェの外観や内装も、日本茶にとらわれて欲しくなかったので、「コーヒーちょうだい」って、お客様が間違って入ってきてしまうような雰囲気をあえて目指したそうです。

人気の和紅茶パフェと和紅茶(ストレート)を注文しましたが、歩いて10分ほどの茶畑の中のテラスも人気だということで、そちらでいただくことにします。
専用バッグに入れてもらったドリンク一式と、渡してもらった地図を手に、ピクニック気分でテクテク歩いていくと、そこには不思議な光景が!




左右に山が迫り、空が狭いこの土地ならではの自然の中に、新東名の巨大な橋梁が立ち並ぶ様は、変わらない昔からの時間の流れと、近未来感を同時に味わえるような不思議な感覚。でも意外なほどに車の騒音は聞こえません。聞こえるのは、近くを流れるせせらぎの音とのどかな鳥の鳴き声。
和紅茶の甘みと清涼さがひときわ心と身体にしみわたります。



パフェは、オリジナルの和紅茶のソフトクリームと和紅茶ゼリー、フルーツもたっぷり入って、ひと口ごとに違う美味しさ。ザクザクしたフレークも合わさると、食感も楽しく、香ばしさもプラスされて食べ飽きません。食材の組合せや分量のバランス等、試行錯誤を繰り返してこの美味しさにたどり着いたとおっしゃっていましたが、納得です。
アイスティーに使用する氷には同じお茶を凍らせて、氷が溶けても味が薄まらないように、という細やかな心配りがされています。お茶を美味しく楽しんでもらうために手間を惜しまない姿勢は、お茶好きのひとりとして嬉しく思いました。


ニガクナイコウチャの誕生




北條さん曰く“割り切って”舵を切った和紅茶は、いまでは、常時16種類(限定品を加えると最高で18~20種類揃う時も)を製造。“つゆひかり”、“やぶきた”、“べにふうき”や“おくみどり”等、品種も表記していますが、より視覚的に分かりやすく、スイートからビターまでのチャートで紹介しているのが特徴的です。 実はここにも北條さんの割り切った考え方が反映されています。

「お茶に詳しい方は品種に関心があるでしょうが、普通の方は飲んだ時の印象と、好きか嫌いかですよね。そこに複雑なチャートは必要ないので、“甘い”から“渋い”までの平行線のみのチャートにしました。」

シンプルなラベルデザインの洗練さとわかりやすさも印象的です。

「茶葉の写真やイラストに、“新茶”と書いてあるような従来の資材は一切やめました。そのことで昔からのお客さんが離れていくこともありましたが、それは仕方ないと、そこも割り切りましたね。」

平日のこの日。カフェには「山ひとつ向こうから来た」という常連のお客様が、ティーソーダをテイクアウト。
「こどもたちの休みの前に、英気を養いに来ました(笑)。自分へのご褒美で来ることが多いです。」
とおっしゃっていました。
その次に来店されたのは、若い男性のおひとり様。茶葉の種類や特徴をじっくりと聞きながら、冷茶をご注文。
週末は近くの興津川に遊びに来る家族連れでにぎわいますが、平日は、ひとり静かに過ごされたり、北條さんやスタッフの方とのお茶談義を楽しまれたり。“割り切った”結果、離れてしまったお客様もいる一方で、確実にファンも増えているのが感じられました。



2021年には、JR静岡駅ビルパルシェ食彩館に和紅茶の専門店「ニガクナイコウチャ」を出店。

「ポップアップやマルシェへの出店を続ける中で、常設店の必要も感じていたところ、ちょうど食彩館に空きが出て声がかかったんです。周りには既存のお茶屋さんも並んでいる場所で特色を出すためにも、紅茶専門店でいこうと。店名は、本当にいろいろ考えたんです。でも、お客さんから“この紅茶は苦くないね”と言われた言葉がそのまま1番わかりやすいと思ったので店名にしました。」

こちらのお店がオープンした時に、変わった店名だなぁと思っていたのですが、そんな誕生秘話があったとは!


静岡の茶文化を未来へつなげる




「ニガクナイコウチャは店長も副店長も年齢が若く、家に急須がない家庭で育っている世代です。でも、彼女たちが仕事を通して触れたお茶を美味しいと思ってくれて、お客さんにもそれを心から伝えてくれているんですよ。若い世代がお茶に触れ、楽しみながら働ける環境を作ることも大事だと思っています。」
と北條さん。



知らない方もいるようですが、緑茶も紅茶(和紅茶)も同じお茶の樹から作られます。
緑茶の消費量が減少する中、和紅茶を切り口にお茶を飲んでもらうことで、茶葉の消費を増やすことにつながる北條さんたちの挑戦には、まだまだ続きがあるようです。
取材でお邪魔したのは、まだ夏の盛りだったのですが、季節が移ろった2024年11月。日本平山頂に「ニガクナイコウチャ NIHONDAIRA」がオープンしました。
3店舗目となるお店のオープンにあわせ、新たに開発したのは和紅茶では珍しいアールグレイやジャスミン風味の紅茶。日本平店の目玉商品となっています。

「緑茶の延長線としての和紅茶ではなく、紅茶専門店としてより特化させています。両河内の自然の中で飲む地元のお茶もいいですが、日本平の広い空の下で飲むアールグレイラテもまた格別ですよ。」
と北條さん。

茶農家としてお茶を育て、自ら商品を開発し販売するだけにとどまらず、次の世代を担うであろう若者たちにお茶の美味しさを伝えながら、働く場を作ることで、静岡の茶文化を未来につないでくれていることに、希望の光を感じました。


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グリーンエイト カフェ
[住所]静岡市清水区和田島349−4
[営業時間]10:00〜16:00
[定休日]なし
[TEL]054-395-2203
[URL]http://www.green8.bz/
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ニガクナイコウチャ
[住所]静岡市葵区黒金町49番地 JR静岡駅ビルパルシェ1F 食彩館
[営業時間]9:30〜20:00
[定休日]パルシェに準じる
[TEL]080-7146-0074
[insta]https://www.instagram.com/nigakunaikouchiya/
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ニガクナイコウチャ NIHONDAIRA
[住所]静岡市清水区村松4050-1
[営業時間]9:30〜16:30
[定休日]火・水
[insta]https://www.instagram.com/nigakunaikoucha_nihondaira/
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来たい時がGOOD TIMING! 若き担い手が提案するお茶を楽しむ時間




次に伺ったのは、その若い世代が自ら創ったお茶を楽しめる空間。
静岡市の中心部、個性的なお店が集まるエリア、鷹匠にある『GOOD TIMING TEA』さんです。



「10代、20代は何をやっても続かない中途半端な部分がありました。大学も中退しちゃったし、就職先もすぐにやめてしまったんです。23歳の時、その頃は実家の製茶問屋で働いていたんですが、父親に“おい、これ飲んでみろ”って勧められて飲んだ1杯の玉露が衝撃的で。
“あぁ、この1杯を、誰かに勧めたい。そういう場所を作りたい。”ってその時に思ったんです。当時はまだ、自分の将来をちゃんと見据えていたわけじゃなかったんですけどね。その玉露の生産者さんは、もういらっしゃらないんですけど、その味を再現した茶葉を販売することが決まったんですよ。」

「思い出の1杯ってありますか?」という質問に、嬉しそうに話してくれたのは、オーナーの和田健さん。
ご実家は、製茶問屋の「だるまや和田清商店」さん。製茶業を始める前にだるま製作をしていたことから“だるまや”と呼ばれ屋号にもなっています。
「GOOD TIMING TEA」店内にも、だるまが並んでいますが、そのお洒落なこと!





家業ゆかりのだるま以外にも、枝ものがドンッと活けられた大きな壺が坪庭のような空間に飾られていたり、トイレの引き戸が少し低めで茶室を思わせたり、駿河竹千筋細工の風鈴や、お店で出た茶殻を使って染めてもらったという駿河和染めの大きなのれんがあったり。
華美ではないのだけど、ひとつひとつセンスが良く、調和がとれているしつらえは、背筋が少しだけ伸びるような凜とした雰囲気もありながら、それでいて流れている空気は居心地がよいのです。

お客様は老若男女様々。ひとり静かにお茶を楽しんでいる常連さんらしきご年配の方もいれば、女性の二人連れがおしゃべりを楽しんでいたり、和田さんやスタッフの方々と同世代の若者がカウンターで談笑していたり。
通りがかりに店内をのぞくと、実に様々なお客様がお茶と空間を楽しんでいるのをよく見かけます。

センスあふれる調度品や店内の雰囲気も素敵なのですが、緑茶やほうじ茶のようなスタンダードな日本茶の美味しさはもちろん、抹茶ソーダやラテ、シェイク等、日本茶の新しい飲み方に出会えるのも、このお店の魅力のひとつ。
しかも、1杯1杯とても丁寧に淹れてくれるので、その作業を見ながらできあがりを待つ時間も楽しいのです。

私のお気に入りは、抹茶ソーダ。
注文が入ってから抹茶を点て、丁寧に淹れてくれる1杯は、お茶の香りや風味、柑橘のさわやかさと心地よいほろ苦さが、これまで飲んだことがある抹茶ソーダとは全く別格の美味しさでした。
いつも、次は違うものを頼んでみようと思うのに、自分のためだけに抹茶を点ててくださる特別感も含め、つい頼んでしまう1杯です。



和田さんにもオススメの1杯を聞いてみました。
「まだ言語化できていないんですけど、このお茶は世界で勝負できると思っているんです。」

そう話しながら淹れてくれたのは、釜炒り茶。
静岡では、あまりなじみのないお茶ですが、蒸して作る煎茶と違って、直火で熱した鉄の釜で炒ったお茶だそう。



水色(すいしょく)は美しい飴色。烏龍茶ともほうじ茶とも違う、香ばしさと少しクセを感じる飲み口でした。ただ、そのクセが揚げ物や焼いたお肉等の脂っぽい食事にとても合いそう。
食事中のお茶としての可能性を感じる1杯でした。


衝撃的だった「お茶は努力しているの?」という問い



和田さんが23歳の時に出会った1杯の玉露。こんな1杯を誰かに勧めたい。そういう場所を作りたい。
そう思った和田さんは、客商売を学びたいという思いもあり、当時行きつけで、かねてから代表とも親交があったコーヒーショップで働き始めます。
そこで代表に言われた言葉がいまでも忘れられないそう。

「コーヒーは、ミルクをいれたり、砂糖をいれたり、飲み方をあれこれ工夫して努力している。お茶は?
お茶は努力しているの?」

「父や祖父の姿を見てきたので“お茶屋だって努力している!”ってそれまでは思っていたんですけど。お茶を“液体”として捉えたときに、飲み方の工夫や提案をしているかと考えたら、確かにまだまだ可能性や余地があるんじゃないかと思えるようになりました。」

ちなみに、最初は客商売を学ぼうと思っていた和田さんですが、途中でその考えは捨てたそうです。

「それでは逆に何も学べないと思ったんです。お客さんから“ありがとう”とか“おいしかったよ”って言ってもらえることが、ただただ、すごく嬉しかったんです。」



ご本人曰く、それまで何をやっても続かず中途半端だったのに、そのコーヒーショップでは7年間働き、任される仕事も増えていましたが、退社の決意を伝えます。仕事を引き継ぎながら物件を探す中で、現在のお店の場所に出会いました。

「ここ、50年も喫茶店を続けてきた場所なんです。流行って25年くらいでグルっと1周すると言われている中で、この場所は喫茶という商売を2回転続けてきた場所。お客さんも、喫茶文化も、根付いている土地柄だと思い、その日にすぐ決めました。」

お店のオープンは、2023年11月。物件との出会いはその年の6月だったというから、物件を決めてからの展開の早さ、実行力、行動力に驚きました。でも、ご縁やタイミングってありますものね。
タイミングといえば、店名について伺った中で、可愛がってもらっていたというお祖父さまとのエピソードを話してくださいました。

「実家の屋号にも“だるま”が入っていますけど、店名は縁起の良いものにしたいと思っていました。お客様それぞれの“よきタイミング”にこのお店を訪れて欲しいという想いを込めています。
オープン直前に、自分が家業の製茶問屋を継ぐことをずっと望んでいた祖父が亡くなったんです。
オープンの日程もお店の様子も祖父には伝えられたから、喜んでくれていたと思います。だから“あぁ、これが俺のグッドタイミングだったんだなぁ”って、その時に思ったんです。本当はお店にも来てもらいたかったですけど。」


生産者と消費者をつなぐハブのような存在に



「家業の製茶問屋って、生産者さんとも、小売りのお茶屋さんも、どっちともつながりあるんですね。それもあって、自分は生産者と消費者をつなぐハブのような存在でありたいと思っています。
そのためのプラットホームのひとつがこのお店。でも、今後は茶畑や農園も取得したいと考えています。
茶の樹を育てているところから見られたり、お茶摘み体験ができたり、それを茶葉にして、そのお茶を飲んだり。お茶が単に飲むだけの液体ではなく、茶殻を使ってお茶染め等も体験してもらえたりするような。そんなお茶のテーマパークを作りたいと考えています。」

話してくれた将来の展望は、想像以上に壮大で、お茶への愛にあふれていました。
ご自身が始めた製茶問屋を孫の和田さんに継いでもらいたがっていたというお祖父さま。その願いをさらに大きく超えてくれそうな孫の姿を、きっと頼もしく思いながら見守ってくれているのではないでしょうか。



もうひとつ、このお店が素敵だなぁと思えるのが、和田さんをはじめ、スタッフのみなさんの心地よい接客です。気配り目配りは欠かさずに、つかず離れず、こちらが求めているちょうどいい距離感で接してくれるのです。
「お茶の経験よりも、人柄を大事にしました。」と和田さん。
スタッフのみなさんのちょうどいい感じ。私にとっては、日々寄り添ってくれるお茶にも通じるものがありました。古き良き伝統を大切に芯にもちながらも、新しい提案を続けることで、お茶業界を盛り上げようとしてくれる若者たちがいることは、静岡茶の未来にとって心強く思えます。


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GOOD TIMING TEA
[住所]静岡県静岡市葵区鷹匠2丁目17-3
[営業時間]8:00〜21:00
[定休日]なし
[TEL]054-374-9360
[URL]https://www.instagram.com/goodtimingtea_shizuoka/
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様々なカタチでお茶の楽しみ方を提案し、静岡茶の未来を支える人々を訪ねる旅は、後編に続きます。
後編はこちら


ライター:ごはんつぶLabo アオキリカ
写真:小塚 司
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