ららら紀行

0027
【沼津発】柿田川の水がもたらすクラフトビールの魅力
#クラフトビール  #沼津市  #柿田川  #名水百選  
静岡県沼津市には、複数のクラフトビール醸造所やタップルームがあり、クラフトビールが文化としての広がりを見せています。個性的なクラフトビール醸造所やタップルームが点在し、それぞれが独自のフレーバーやスタイルを持つビールばかりです。沼津のクラフトビールは、地域の自然の恵みを感じさせるとともに、そこに込められた職人たちの情熱が味わいに反映されています。


静岡県沼津市、千本浜からすぐの場所にある、クラフトビール醸造所「柿田川ブリューイング」。美味しい水、新鮮な農水産物、そして雄大な富士山。沼津という土地で、ビール造りへの情熱を注ぐ片岡哲也さんと、彼が造り出す至極のビール、そして新たな挑戦についてご紹介します。


イギリスで生まれた「ビール職人の夢」




柿田川ブリューイングの設立者、沼津クラフトの社長兼ブルーマスターの片岡さんがビール職人を志したのは、イギリスへの留学がきっかけでした。現地のパブでは、人々がビールを片手に楽しそうに語り合い、その中で味わったクラフトビールにすっかり魅了されたと言います。
帰国後、沼津にある「ベアードビール」に入社。
ヘッドブルワーとして8年間経験を積んだ後、2016年に「柿田川ブリューイング」を創業しました。


沼津愛が生んだ「沼津クラフト」



柿田川ブリューイングの醸造所とテイスティングルームはこちらの入り口からどうぞ
沼津の港町をイメージした「イカリ」と、沼津らしさを象徴する「タチウオ」を組み合わせた印象的なロゴマーク。
片岡さんは、沼津への愛情を胸に「沼津クラフト」というブランドを立ち上げました。
創業の地は、なんと片岡さんが住んでいた物件の1階。元々写真館だった場所を改装して醸造所をオープンしたといいます。


柿田川の水が育む、こだわりのビール



「東洋一の湧水」とも言われる柿田川の湧水
柿田川ブリューイングのビール造りにおける最大の特徴は、何といっても「柿田川の水」を使用していること。
環境省が指定する「名水百選」にも選ばれた、日本屈指の湧水です。
豊富な水量とミネラルバランスに優れた軟水は、口当たりの柔らかさが特徴。

定番ビール5種類の中でも1番人気の「クリームラガー」
中でも、柿田川の水の特徴に合わせて作られた「クリームラガー」は、雑味のないまろやかな味わいが特徴の一杯です。
定番ビールにラインナップし、柿田川の水の美味しさを存分に堪能できます。

柿田川ブリューイングの近くでは、地下水が湧き出ている


ゆっくりと味わう至福のビール体験



柿田川ブリューイングでは、「SLOW BEER SLOW LIFE」をコンセプトに、時間をかけてゆっくり味わえるビールを目指しています。
モルトとホップのバランスを重視して丁寧に醸造されたビールは、「香りや旨みを感じながら、一口ずつ大切に味わいたい」と思わせてくれます。


「マージーサイドESB」。ESBはエクストラスペシャルビターの略。
苦味はそこまで強くなく飲みやすい

沼津クラフトのフラッグシップ的存在は、「マージーサイドESB」。イギリス留学中に片岡さんが出会った伝統的なスタイルのビールで、モルトの豊かな風味とコクが口いっぱいに広がります。

「流行よりも、自分が美味しいと思うビールを追求したい」と語る
「イギリスでは、1杯のエールビールをコーヒーと同じくらい時間をかけて飲む文化があります。そんな風に、ゆっくりと自分の時間を楽しみながら味わってもらえるビールを作りたいと思ったんです」彼の言葉からは、ビール造りへの深い愛情と、飲む人への心遣いが伝わってきます。



地元の恵みを詰め込んだ季節限定ビール


沼津クラフトは、季節限定ビールやコラボレーションビールも魅力的です。
ニューサマーオレンジ、寿太郎みかん、西浦レモネードなどの柑橘類、韮山産のきらぴ香(いちご)、沼津産「島郷の桃」、富士川産のキウイなど、地元の旬の果物をふんだんに使用して作られています。
他にも、三島の馬鈴薯や、長泉のオリーブ、蕎麦粉や味噌を使ったコラボビールも作ったことがあるというから驚きます。
柿田川ブリューイングでは、アメリカオレゴン州にあるポートランドケトルワークス社製の醸造設備を使用
柿田川ブリューイングの仕込みタンクは一番小さいものでも、400〜600リットル。試作用の小さなタンクがないため、どんなビールも一発勝負で仕込んでいきます。
「自信があるからできるんです」と笑顔で話してくれました。その言葉からは、長年の経験と確かな技術に裏打ちされた自信が感じられます。


工場併設のテイスティングルームでは希少なコラボビールも


「飲み比べセット」では好きなビールを3種類選ぶことができる
醸造所のすぐ横には、テイスティングルームを併設。
ビール造りを間近で感じながら、造りたてのビールを飲むことができます。
テイスティングルームにはタップが10本。定番ビール以外にも希少なコラボビールが飲めることもあるそうです。

ビールはテイクアウトも可能。千本浜で潮風を感じながら飲むのもおすすめ


沼津クラフトテイスティングルーム
[住所]静岡県沼津市千本緑町2-8-10
[TEL]055-919-6473
[URL]http://numazucraft.com/retail/index.html




地域と共に静岡のクラフトビールを盛り上げる


静岡県はクラフトビール造りが盛んで、ブルワリーの数は30カ所以上。全国でトップ5の数を誇ります。
そんな静岡のクラフトビールをさらに盛り上げたいという熱い想いから、片岡さんは、約3年前に「静岡クラフトビール協同組合」を設立。代表を務めています。


「1つのブルワリーでは実現が難しいことも、地元のブルワリーや県を巻き込み、『静岡ブランド』として、そのブランド力を高めていけるはず」。
現在計画しているのは、ビール造りででてくる「モルト粕」の活用。
モルト粕をアップサイクルして、「ビール豚」を育てたり、「モルトビネガー」を作ることを構想しているといいます。
「ビールを飲みながら、ビール豚にモルトビネガーをかけて召し上がっていただく。そんな日が来るのも近いかもしれません」と、ビール造りのその先まで見据えていることが伺えます。

静岡の美味しいクラフトビールをより多くの人に手にとってもらえるよう各社で協力している
組合では、2024年11月に沼津市でビアフェスを開催。さらに、将来的には海外へのビール輸出も視野に入れています。
みんなでやろう!と周りを巻き込む片岡さんの姿勢には、ただただ圧倒されるばかりです。


新たな挑戦「千本スピリッツ」



ビール造りで培った技術を活かし、蒸留酒造りにも挑戦しています。
本社兼醸造所の斜向かいに位置する蒸留所「千本スピリッツ」では、地元産の果物を使った蒸留酒が造られています。

純度の高い麦芽スピリッツと静岡県産レモンを使用した「リモンチェッロ」。リキュールも販売開始した
中でも、静岡県産のレモンを贅沢に使用した「リモンチェッロ」は、その爽やかな香りとすっきりとした味わいが人気。
レモンの皮むきから全て手作業で行い、1回分の製造でなんと100kgものレモンを絞るというから驚きです。

今後はウイスキーやシャルトリューズ(ハーブで味付けされたフランスのリキュール)の製造も視野に入れている


絶景タップルーム「SENSPI」




2023年12月に蒸留所の3階にオープンした「SENSPI」は、千本スピリッツで造られたクラフトサワーや沼津クラフトのビールが楽しめるタップルーム。
テラス席からは雄大な富士山を望むことができ、夏には狩野川の花火大会を鑑賞することもできます。

テラス席ではBBQも楽しめる
早い時間からオープンしているので、昼飲みにも最適。
片岡さんの「ゆっくりと空間や雰囲気、人との会話を楽しんでほしい」という想いが詰まった空間で、美味しいお酒と時間を堪能できます。




SENSPI
[住所]静岡県沼津市千本緑町3-1 3階
[TEL]055-957-9100
[URL]https://www.instagram.com/senspi_numazu/



最後に


沼津の地で、クラフトビールや蒸留酒造りに情熱を注ぎ続ける片岡さん。
片岡さんの挑戦は、ブルワリーの枠を超えて、静岡のクラフトビールをさらに盛り上げる大きな力になっていることを確信しました。
ぜひ、柿田川ブリューイングのテイスティングルームや「SENSPI」に足を運んでみてください。
きっと、ここでしか味わえない特別な体験ができるはずです。
関連キーワード
関連する記事
View All