サウナは今や日本でもすっかり定着し、老若男女問わず多くの人に親しまれています。「ととのう」「ロウリュウ」といった専門用語も広まり、日常生活の中で気軽に楽しむ人が増え、今や文化として定着しつつあります。
そうした中、特に注目を集めているのが静岡のサウナです。サウナを目当てに県外から訪れる人も増え、サウナが地域を越えて人々を動かす存在にもなっています。なぜ、静岡のサウナがそこまで人々を惹きつけるのか、その魅力に迫ってみようと思います。
サウナー憧れの地!
—なぜ「サウナしきじ」は聖地と呼ばれるのか
静岡県静岡市に、サウナファンたちが“聖地”と称える特別な場所があります。それが「サウナしきじ」。サウナーと呼ばれる熱心なサウナ愛好者の間で絶大な支持を集め、多くの著名人もお忍びで訪れる人気スポットです。
サウナしきじ外観・平日、午前中でも来店者は多い
現在の「サウナしきじ」が誕生したのは2005年。オーナーが変わり、より洗練されたサウナ施設へと生まれ変わりました。サウナブームが広がる中で、この場所は自然と“聖地”と呼ばれるようになり、全国からサウナーが訪れるように。
そんな「サウナしきじ」の人気を支える最大の秘密は、なんといっても「水」。館内には安倍川水系の地下天然水が豊富に使われ、特に名物の水風呂は「極上のととのい体験」ができると評判です。
施設は、お風呂・休憩室・食事処まで完全に男女別になっており、プライベートな空間でサウナを楽しめるのも魅力のひとつ。サウナーたちが求める究極のリラックス空間、それが「サウナしきじ」なのです。
入口には著名人の色紙がズラリ
趣のある番台に薬草の香りがふわりと漂う
昔ながらのロッカーの鍵置き場
チケットは自販機で購入します。
料金は男性が平日1500円・土日祝1700円。女性はいつでも1000円です。(2024年12月)
常連のダンサーAKIさん
心も体もきれいにと、毎月通っています。
入口の番台を中心に男性と女性が分かれて入場した後は、お風呂はもちろん休憩室・食事場所も完全に「男女別」となります。
100℃超えの本格派 vs. 60℃の薬草スチーム—選べる極上サウナ体験
サウナしきじでは、2種類のサウナを楽しむことができます。100〜110℃に設定された本格的なフィンランド式サウナと、低温ながら薬草の力でじっくりと発汗を促すスチーム薬草サウナです。
2つのサウナが隣り合わせ
フィンランドサウナは100度~110度
スチーム薬草サウナは、施設のリニューアル後に導入され、「美肌になれる」と女性を中心に高い支持を集めています。温度は60℃と比較的低めですが、室内は熱い蒸気に包まれ、薬草の豊かな香りが心地よく広がります。
美肌効果が高い薬草サウナ
濃い深緑をした薬草風呂、水はサウナしきじの地下から汲み出す天然水
この薬草サウナの特徴は、韓国から取り寄せた15〜20種類の薬草を専門の調合師がブレンドしていること。肌をしっとりと整え、深いリラックス効果が期待できるため、薬草風呂とセットで利用するのもおすすめです。
一方、フィンランド式サウナは100〜110℃の高温に設定され、しっかりと発汗したい人にぴったり。サウナしきじ自慢の「天然水の水風呂」と組み合わせれば、心も体も極上の“ととのい”を体感できます。
あなたはどちらのサウナで“ととのう”?—サウナしきじなら、気分や目的に合わせた贅沢なサウナ体験が待っています。
飲めるほどの天然水、
サウナしきじの水風呂の魅力
数あるサウナの中でも、「サウナしきじ」が圧倒的な人気を誇る理由のひとつに、唯一無二の“水”の存在があります。特に「地下天然水の水風呂」は、そのなめらかな肌触りと心地よい温度で、多くのサウナ愛好者を虜にしています。
肌に突き刺さる冷たさではなく、やわらかくでなめらかな水が全身を包み込みます。
この水風呂には、南アルプス水系(安倍川水系)の地下深層部で長年かけてろ過された、ミネラル豊富な天然水が使用されています。
特にカルシウムやマグネシウムを多く含む軟水は、まろやかな口当たりで飲料水としても優秀。水風呂の温度は18℃と、一般的な水風呂よりやや高めに設定されており、冷たすぎず心地よく浸かれるのが特徴です。
天然地下水の水質成分表
「当施設の水は持ち帰りも自由なので、ペットボトルやポリタンクで持ち帰る方も多いですよ」と、大谷さんは笑顔で語ります。
この天然水は、水風呂だけでなく、浴槽の湯やシャワーの水、飲料水、さらにはタオルや館内着の洗濯水に至るまで館内のすべてに使用されています。サウナ内では、この天然水を使った氷も用意されており、口に含みながら楽しむことができるという贅沢なサービスも。
人気の裏にある名水の力・水質と料理の深い関係
美味しい料理には、必ず理由があります。その理由のひとつが「水」です。料理の基本となる出汁、米の炊き上がり、コーヒーやお茶の味わいに至るまで、水の質が味を左右します。名水と呼ばれる水には、ミネラルバランスや硬度の違いがあり、それが食材の旨みを最大限に引き出すため、美味しい食事が提供できるのでしょう。中でも一番人気は「しょうが焼き定食」で、生姜の効いた甘辛い豚ロースに、3つの小鉢、ご飯、味噌汁が付いた満足感のある一品です。
ごはん大盛り。1番人気の しょうが焼き定食 950円(2024年12月)
お昼時の厨房は大忙し。活気のある声が厨房の中に飛び交います。
体の中も外もきれいになれるサウナしきじの「水」。サウナだけではなく、ぜひ食事も楽しんでください。
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サウナしきじ
住所:静岡市駿河区敷地2-25-1
電話:054-237-5537
営業:24時間(ただし男風呂2:00〜6:00 女風呂1:00〜6:00は浴室清掃で入浴不可)
年中無休
駐車場:あり
※現在、水風呂の滝の設備は休止となっております。
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源泉×サウナ×美景—梅ヶ島サウナヴィラが叶える新しい贅沢
静岡駅から車で約1時間。山々や清流を眺めながら進むと、全国的にも知られる秘境の温泉地「梅ヶ島」にたどり着きます。静岡では“オクシズ”と呼ばれるこのエリアに、2023年に新たな滞在型施設「UMEGASHIMA DRIVE-IN & SAUNA VILLA」が誕生しました。この施設は、ドライブインとサウナヴィラが融合した1日2組限定のプライベート宿泊施設で、洗練されたデザインと自然を生かした空間が、訪れる人々に静かな癒しのひとときを提供します。
sauna IRORI(囲炉裏)
森林のさわやかな香りや、鳥のさえずり、川を流れる流水音に包まれ、澄んだ空気のおいしさを肌で感じられました。まさに都会の喧騒を忘れられるような場所です。
特にインスタグラムを中心に話題となり、若者の間で注目のスポットとなり、県内外から多くの旅行者が訪れる人気の場所です。今回は、梅ヶ島の大自然に包まれながら楽しめる極上のサウナ体験と、この場所ならではの魅力をご紹介します。
梅ヶ島の景色。山々に囲われ、中央に安倍川が流れる。(左)ドライブイン(右)
施設を運営する近藤大智さんに、そのこだわりや誕生の背景について詳しくお話を伺いました。
株式会社アースシフト専務の近藤大智さん〜ドライブイン横のガゼボと呼ばれるスペースで〜
贅沢なひとときを提供する、1日2組限定の宿泊、
そして静岡の恵みを味わう
1日2組限定の特別な客室は、レトロモダンな和室とナチュラルでシックな洋室の2タイプあります。どちらも梅ヶ島の豊かな自然を満喫できるよう、外に向かって開かれた開放的な造りが特徴で、隠れ家のような贅沢な空間です。
洋 sauna villa〔SLIT〕
和 sauna villa〔IRORI-囲炉裏-〕
宿泊者には、静岡県産の厳選食材を使用した特別な食事が提供されます。BBQやパエリアをはじめ、期間限定でしゃぶしゃぶも楽しめるなど、季節ごとの魅力が詰まったメニューが用意されています。富士山岡村牧場の岡村牛ステーキ、梅ヶ島産のあまごや生ワサビ、希少な駿河軍鶏(シャモ)など、食材の一つひとつに静岡のこだわりが感じられます。さらに、お米や鰹節に至るまで静岡県産にこだわり、土地の味覚を存分に堪能できるのも魅力です。
また、ここでの食事は、ただ味わうだけではありません。料理の最後の仕上げはあえて宿泊者自身に託され、五感を使って完成させる特別な演出が施されています。この土地ならではの食材を使い、自らの手で仕上げることで、より深く食の楽しみを味わえる体験が待っています。
静岡県産厳選食材BBQ用
ジューシーな牛肉100%のハンバーガーには、梅ヶ島産の風味豊かなワサビがアクセント。フライには梅ヶ島で採れたアマゴと原木しいたけが添えられ、バランスの取れた味わいが堪能できます。
そのサクサクとした食感と、アマゴの旨味が口の中で広がり、思わず頬がほころびます。
ハンバーガーや土日祝日限定のカレーやスイーツなど、宿泊しなくても食事できるドライブインが併設されており、家族連れやライダーに人気です。
梅ヶ島バーガー+オクシズセット 2,000円(2025.1現在)オクシズのお茶【ヤーコン茶】付き(HOT/COLD)
料理を担当するChef ホリタクさん
ととのえ親方プロデュース、自然の中で満喫するサウナ
1日1組限定でサウナのみのデイユース利用も行っています。夜には満点の星の下で外気浴を楽しめるのも魅力のひとつです。サウナは2種類あり、1つは囲炉裏をイメージした和風サウナでは、囲炉裏にかけられたやかんに静岡茶が入っています。さらに、お茶のロウリュウを楽しむこともできます。
もう1つは、フィンランド製薪ストーブを使った本格サウナです。地元・梅ヶ島産の薪を使い、燃える香りと熱気を満喫できます。
元は、ドライブインだった場所を「サウナを通じて人々が癒やされる場へ」というストーリーを受け継ぎ、「ととのえ親方」こと松尾大氏がサウナエリアのプロデュースを手掛けています。
和室 sauna villa〔IRORI-囲炉裏-〕日本では珍しいドイツEOS製の電気ストーブを使用
洋室 sauna villa〔SLIT〕世界トップブランドHARVIA製の薪ストーブを使用
そしてなにより紹介したいのは、素晴らしい水質の水風呂を2種類も楽しむことができるという点です。
1つ目は、冷泉「梅ヶ島コンヤ温泉」。2つ目は、中硬水「安倍川」の天然水。ここだけの特別な水風呂です。
梅ヶ島コンヤ温泉とは、環境省指定の国民保養温泉地「梅ヶ島温泉郷」を構成する4つの温泉地のひとつ。泉質は強アルカリ単純硫黄泉で、無色透明のとろっとした肌触りが特徴で、pH10.3という静岡県内トップレベルの強アルカリ性です。ナトリウムイオンや塩素イオンを豊富に含み、角質除去や新陳代謝の促進に優れた効果があるとされ、「天然の化粧水」や「美人の湯」とも称される日本有数の名湯です。
さらに、循環なしの100%源泉にこだわり、各部屋にも温泉を引いているため、室内で温泉を楽しむことができます。
中硬水「安倍川」の天然水は、ミネラル豊富な、硬度110 ナトリウム3.9㎎/L・カルシウム41㎎・マグネシウム2.5㎎/L・シリカ12㎎/L。食事を作る時、コーヒーを淹れる時にもこの天然水が使用されています。
「梅ヶ島コンヤ温泉の冷泉」と「安倍川の天然水」2つの水風呂
施設の看板や部屋番号などにも、このpH10.3を模したデザインが使われています。
旅の記憶に刻まれる、温泉と食事のおもてなし
ここでの体験は、食事を含めたガストロノミーツーリズムとして、静岡の魅力を存分に味わえるものです。施設を運営する近藤さんは、「お客様に選んでいただくには温泉があるだけではダメなんです。」と語ります。
当初はグランピングのように食材を持ち込むスタイルを想定していましたが、実際に訪れる人々が“地元の食”を求めていることを実感し、この場所にふさわしい「食」+「温泉(サウナ)」スタイルを提供しています。
さらに、施設の魅力は、地域を盛り上げたいという強い想いと、お客様の声に耳を傾ける姿勢にあります。お客様の声を反映した空間づくり=進化し続ける施設となっています。
「ガゼボに透明ブラインドを設置しました」
「ドライブイン横にシアターが登場します」
「温泉タンクを増設し、外の風呂桶でも温泉を楽しめます」など、
これらはすべて「お客様の声を反映した結果」だと近藤さんは話します。
施設の企画からSNSの発信まで自ら手掛け、訪れる人々の期待に応え続ける姿勢こそ、この場所の魅力を高める要因となっています。
梅ヶ島が地元でもある近藤さんは、地域の課題や将来についても教えてくれました。
「梅ヶ島の人口は350人を切り、10年後、20年後の未来を考えると、地域を守りたいとの思いが強くなります。僕たちだけでなく、企業誘致など複数の力で盛り上げたい。宿泊者には地域で使えるクーポンやレンタサイクルも提供しているので、ぜひ梅ヶ島を巡ってほしいです」
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UMEGASHIMA DRIVE-IN & SAUNA VILLA
住所:静岡県静岡市葵区梅ヶ島4159-37
電話:054-295-4137
営業時間:ドライブイン 10~16時、土・日曜、祝日は8~16時
※デイユース・宿泊は公式HPより要確認
定休日:不定休
駐車場:あり
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最後に
サウナの聖地「サウナしきじ」、そして豊かな自然に囲まれ、地元食材を堪能できる秘境「梅ヶ島サウナヴィラ」。どちらも訪れる価値のある特別な場所です。
それほどに、静岡の水は体に優しく、美味しい。 極上のサウナ体験を、ぜひ静岡で味わってみてください。
写真:小塚 司、山口 有一