ららら紀行

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温暖な気候で育てたふっくらとした浜松のうなぎ。養鰻発祥の地を訪ねる。
#浜松  #浜名湖  #鰻  
甘辛く香ばしい香りが漂ううな重。浜松市内には80軒近くのうなぎ店があり、環境省が認定した「かおり風景100選」に「浜松のうなぎ」が選ばれているほど。“浜松といえばうなぎ”といっていいほど、全国的にも認知されているのではないでしょうか。なぜ浜松のうなぎが有名なのか、今回は浜松のうなぎの歴史や養鰻について知りながら、そのおいしさの秘密を紐解いていきます。

浜名湖は養殖うなぎの発祥の地。養鰻に最適な気候・風土を持つ。



淡水と海水が交わる汽水湖・浜名湖。ここは養鰻業発祥の地です。
明治時代に、川魚商である服部倉治郎が東京・深川でうなぎの飼育研究を試みたあと、移動中の列車の中で見かけた浜名湖が養鰻にぴったりだと思い、この地で養殖をスタートさせたといいます。
昭和44・45年越冬期に「エラ腎炎」が流行り、生産量は大幅に減少してしまいました。その対応策として、冬期における魚病発生を防ぐため昭和46年頃から加温施設が試験的に始まったといいます。当時は燃料となる重油が非常に安値であったこともあり、次第に普及。その後、村松啓次郎が養殖の生産量を飛躍的に増やす方法を確立し、この養殖方法は全国へと広がっていきました。


浜名湖地域(浜松市・湖西市)で浜名湖養魚漁業協同組合の組合員によって養殖された成鰻を「浜名湖うなぎ」としている。養殖履歴を明らかにして育てられた安心・安全なうなぎのみ。
浜名湖には、うなぎの養殖に最適な次のような条件が整っています。
(1)遡上するシラスウナギの採捕が可能。
(2)三方原台地から豊富な地下水が供給されるため飼育しやすい。
(3)年間の平均気温が15度前後と温暖な環境。
現在、生産量こそ他県に譲るものの、温暖な気候で豊富な地下水脈をもつ浜松のうなぎは、味も品質も良く、今もなお、全国にその名を馳せているのです。


大正11年創業「海老仙」で、浜名湖の養鰻について学ぶ。



「海老仙」の代表取締役 加茂仙一郎さん。
1922年(大正11年)創業、養鰻業を営む「海老仙」を訪ね、加茂仙一郎さんにお話を伺いました。
「海老仙」は、もとはクルマエビを扱う会社として創業。現在は、うなぎの養殖をはじめ、エビやカニ、魚などのさまざまな水産物から水産加工物までを扱い、養殖・加工から卸、実店舗での販売までを行う会社です。

浜名湖エリアはシラスウナギが獲れ、養蚕・繊維業も盛んであったことからカイコを餌としてうなぎの養殖が始まったといいます。東京と大阪の真ん中に位置し、交通網も発達していたことも利点でした。

浜名湖近辺には、昭和の最盛期には480軒ほどがうなぎの養殖を行っていましたが、現在残るのは30軒弱程度。「新幹線からの景色も、かつては養鰻池が多かったのですが、現在ではメガソーラーが多くなってしまいました」と加茂さんは話します。
衰退の原因は、昭和60年代に中国や台湾からの安価なうなぎが入り、消費者がそちらに流れてしまったため、経営不振から多くの事業者が廃業していったのではと考えられています。その後、国産うなぎが再評価され、現在に至っています。




そんな「海老仙」も、実は一度、養鰻から撤退しており、1989年(平成元年)に再開したと言います。 「静岡県内では吉田町のほか、国内外でも宮崎、鹿児島、台湾、中国などで養鰻は行われています。昔はたくさんつくることを目標にしていました。
生産量を昔のように日本一になることは難しいけれども、浜名湖の養殖うなぎを日本一おいしいうなぎにしたい。今、養鰻家の2代目、3代目と連携し、いいうなぎをつくろうと頑張っているところなんです。浜名湖、遠州灘でシラス漁をする漁師さんと養鰻場、鰻流通問屋と鰻専門店の皆さんと連携し、生産量も増やせるような状況をつくっていければと考えています。安心、安全でおいしいうなぎをつくりたい」と加茂さんは意気込みます。


おいしい浜名湖のうなぎを育てるために。餌から育て方まで毎日試行錯誤。






養鰻池に案内していただきました。ここは、浜名湖の養鰻うなぎの魅力を伝えるために、2022年に観光案内ができる場として整備した場所。近隣の小学校の社会科見学をはじめ、観光ツアーでも案内しており、養鰻について現場で実際に目で見て学ぶことができるようになっています。今後も観光しやすいように整備を予定しているとのことです。
水温28〜30度がうなぎが育つのに適温の環境と言われており、そのためには保温性があるビニールハウスを利用します。水の中には配管が通っており、寒い季節はその配管の中にお湯を通すことで水を温めています。

 
「育てる際にもっとも気を使うのは酸素がきちんと循環できる環境をつくること。それから、エサ。材料を取り寄せ、自分たちで配合し、練って、エサをつくっています」。
おいしいうなぎを育てるために、飼料づくりも日々試行錯誤。大豆由来のものやスケトウダラの粉などを練って、もちもちのお団子のようなものをつくってあげています。
「人も食べられる材料でつくっていることもご安心いただける要素になっています。人が健康を考えるように、うなぎの健康を考え、オリゴ糖など腸内環境を整えるものも配合しています」。
大学と共同研究を行うなど、さまざまな工夫を行っているとのことでした。エサやりの様子を見学したい場合は、朝8時半か夕方17時頃がベストとのことです。


 
海老仙ではうなぎの卸も行なっているが、天竜川水系のミネラル豊富な地下水で活じめし、隣接の加工場で熟練の職人がうなぎをさばき、加工販売も行なっている。ベテランの職人ともなると1日1200匹ほどさばくそう。


海老仙
[住所]静岡県浜松市中央区雄踏町宇布見8962-5
[TEL]053-592-1115
[URL]https://www.ebisen.info
※観光ツアーの対応も可能。詳しくは問い合わせを



「山本亭」で、秘伝のタレを使用し、ふっくらと焼き上げたうなぎをいただく。



 
1975年(昭和50年)に創業した「山本亭」。二代目店主・山本幸介さんは、静岡県の食材を積極的に使用し、静岡県の農林水産業や食文化の振興に貢献している「ふじのくに食の都づくり仕事人」として表彰された料理人です。
こちらでは「海老仙」のうなぎをはじめ、浜名湖や国産のうなぎを使ったうなぎ料理や浜名湖・遠州灘の鮮魚を使った料理、すっぽん料理などを提供しています。水深50mから汲み上げた地下海水を使用した生簀に魚を放ち、鮮度の良い状態の魚を提供しているのが特徴。生簀も2週間に1度清掃を行なっているので、1階席では目の前で魚たちが泳ぐ様子を見ながら食事ができるのも特徴的です。
また、窓側の席は浜名湖が広がり、その景色とともにいただくことが、また旅の中の記憶に残るワンシーンになるかと思います。


静岡県産のコシヒカリを使用した「うな重」。
継ぎ足しで使用している秘伝のタレで香ばしく焼き上げたうなぎは、その香りだけで食欲をそそります。
このタレは、実は昭和50年の創業よりもさらに古く、先代の祖母が別の名前で店をやっていたときに使っていたタレから継ぎ足しで使用しているという歴史あるもの。

「『海老仙』のうなぎをはじめ、浜名湖のうなぎは、温暖な気候、良質なエサを使用しているので品質がいいですね。特に、温暖な気候のおかげで、うなぎの成長が早く、うなぎの骨が気になりにくくなるのです。人間と同じで、ゆっくり成長すると骨が太くなってしまいますが、短期間で成長する方が良いうなぎに仕上がるのです」。

また、温暖な環境下で育つ方が身もやわらかいため、うなぎを蒸す時間も短時間で済むとのこと。こちらでは関東風のうなぎを提供しているため、蒸す作業が工程のひとつにありますが、本来の関東風よりも浅く蒸すのが特徴のひとつだそうです。

毎朝、「海老仙」から生きたままの鮮度の良いうなぎを厳選して届けてもらっているとのこと。
「お任せではなく、こちらもより良いものを入手したいので、届けてもらううなぎは厳しい目で見ていますよ。うなぎを触ることでうなぎの品質がわかります。皮の色目、頭の大きさでもわかります。そこをしっかり見極めて入手し、そしてさばいています」と、うなぎへのこだわりを語ってくれました。


うな重をいただく前に、うなぎの白焼きと地酒で1杯やるのもおすすめ。一般的には白焼きはタレをつける前の炙っただけのものが多いが、こちらではお酒とみりんベースのタレをつけて炙っているオリジナルの白焼き。こちらの方がふっくらと仕上がるのだそう。わさびと大根おろしを和えたものをのせながら、醤油を少々つけていただきたい。


山本亭
[住所]静岡県浜松市中央区舞阪町弁天島3212-3
[TEL]053-592-1919
[URL]http://www.yamamototei.com


【今回ご紹介したスポットのモデルプラン例】
※車を利用

9:30
JR浜松駅出発。
10:00
海老仙にて、浜名湖うなぎの養殖の歴史の話と、養鰻池の見学。

12:00
山本亭にて昼食

14:00
JR浜松駅到着。


浜松は古くから養殖業が盛ん。うなぎ以外にも、アユ、カキ、のり、スッポン等の養殖が行われている。また、浜松には船曳網漁(シラス漁)、底曳網漁、はえなわ漁(フグ漁)などさまざまな漁法があり、多種多様な魚介が水揚げされる。写真はたきや漁(照火いさり漁)。伝承漁業として継承するために「観光たきや漁」も行なっているので、旅のプランに組み込むのもおすすめ。
(問い合わせ:雄踏町たきや漁組合 053-592-2260 https://takiyaryou.jp
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